×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

 はじめてのお酒は友達と飲んだら、という提案に、年下の恋人は不満の色をすこしも隠さない顔をした。なんでと言いたげだったから、わたしとはこれからもずっと一緒にいれるんだし、というようなことをていねいに話してやると、みるみるうちに不満はどこかへと飛んでゆく。ここからまた更に機嫌をわるくさせたくなかったから、カワイイ、と言葉にするのはやめておいた。



「ただいま」

 今から帰ります、の連絡の声の元気さが気になって外で恵を待っていたら、わたしの姿を見た途端にぺかっと輝く笑顔を見せてくれて、思わず口が開いた。

「おかえり……」
「待っててくれたんですか?」
「結構酔ってるみたいだったから。楽しかった?」
「はい。すごく」
「じゃあ良かったよ。手ポカポカだね、ねむい?」
「ねむいです」
「風呂溜めてるけどやめとこっか。パジャマに着替えて顔洗っといで」

 ギュ、ギュ、と何度も握られる手から機嫌の良さがうかがえる。家に入っても手はほどかれず、顔を洗いに行くつもりはないらしい。思わず出たため息も、ニコニコめずらしい表情をされるとこっちが悪いような気分になってしまう。
 いつものキリッとした顔も好きだけど、なんていうか普段が普段だから、かわいくて仕方がない。世話をし過ぎるのは良くないが、まあ今は、と誰にでもない言い訳をしつつ、洗ったパジャマを着させたり洗面所に誘導したりする。恵はお酒が入ると笑顔が増えるんだなあ。カワイイ。ベッドに入っておやすみと頭を撫でたら恵はストンと眠ってしまった。