「他人と暮らすってむずかしいなあ」 被った買い物を見つめてため息をつく。暮らすうんぬんというよりは、意志の疎通がむずかしいのだろうか。怠ってしまった。買い物が被るなんてのはひとこと連絡すれば済むことだ。「ティッシュ買いました」「洗剤の詰め替え終わりました」一瞬で済む。一人で暮らしていたときは家のことはすべて自分でやらないといけなかったし、そもそも家には自分だけだったから連絡なんて一切必要なかったわけで。実家は……忘れたけど、血の繋がり特有の楽なところはあったような気がする。まあ別に死ぬようなミスではないし、次から気をつければいいだけの話なんだけど。 ふと視線をあげると恵くんは真っ青な顔をしていた。 「どしたの」 「もう一緒には住まないって意味ですか」 「はい?」 「俺と暮らすのむずかしいって」 「いやそういう意味じゃないよ。こうやって買い物被ったりするの、あるよね〜って話……」 急に重たい話をされてビビりながら、十箱積まれたボックスティッシュを指さす。二人でいるときになくなった〜と騒いだからとはいえ、ピッタリ同じタイミングで買ってくるのは、逆に気が合うのか。 こういうのを繰り返して決まりや慣れができてくるのかな。ずっと青い顔がおさまらない頭を撫でながらそう思う。 |