「なまえさん朝飯は?」 「今日は良い。お腹痛くなる気がする」 あたためたお茶を両手で持ちながらなまえさんはズズズとすすった。支度は終わっているが顔は眠そうなままで、思わずため息をつく。 「何時ごろ寝ました?」 「二時くらい……」 「そろそろ学習してください。早くベッド行っても寝なかったら意味がないじゃないですか」 「もう本当にすぐ寝る、ほんとに」 「今日は俺、それを確認できないんですよ」 今日からなまえさんは九州に行く。なんでわざわざ東京のなまえさんがと思うが、言えることと言えないことはあった。術式の都合がいいとか、その辺だろう。実力に関して心配はしていない、でもその他は心配だった。なまえさんは自分の体をあまり大事にしない。 「じゃあ寝る前電話するよ」 「そういう意味で言ったわけじゃないです」 「知ってるよ。わたしが寂しいから電話するだけ」 ちらりとテレビに表示されている時計を確認して、マグカップの中身を一気に飲み干す。流しにちゃんと出して、キャリーケースと手持ちの鞄をチェックするのを見届ける。 「お土産何がいい」 「いらないです。電話待ってます」 「分かった。野薔薇と悠仁にだけ買ってくる」 「俺にも買ってきてください」 「わかった、わかった。恵、いってらっしゃいのチューして」 朝飯の途中なのにこういうことを言う。時間は迫っていて、あわてて飲みこんでからなまえさんの色のない唇の端っこに口づけた。 |