×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -

「どこ行くの?」
「さあ」
「質問変える。どこに行きたいの?」

 グイグイと無理に手を引っ張られるのを少し迷惑に思いながらも、みょうじはそれを勝手に振り払おうとはしなかった。伏黒の顔が見えないのが、さみしい。知らない土地、知らない地名、知らない風景が過ぎていくのを、二人は何時間も繰り返していた。
 伏黒はしばらく黙り、みょうじは答えを待つ。

「二人で死ねるところに行きたいです」

 そんなところどこにもないよとみょうじは言ってあげたかったが、喉がつかえて何も言うことができない。ザクザク、ガリガリ、二人分の足音がやたらと耳に残る。それぞれのズボンのポケットではひっきりなしに連絡が来ているが、音が鳴るのもバイブレーションも切っているから、知らないふりができた。
 日が落ちてゆく。伸びた影はすぐに塗りつぶされてしまい、みょうじの視界の伏黒はただ一人になった。歩みは止まらない。