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 ううん、うう、という苦しそうな声で目が覚める。電気をつけると隣で寝ているなまえさんがうなされていた。毛布を握りしめて、眉を寄せている。すぐに揺り起こした。

「なまえさん」
「うー……うぅ、っ……」
「なまえさん起きてください」
「……は、……あ、え、めぐ……み」
「恵です」

 目尻から涙が一粒こぼれる。起き上がった体を支えながら手を握ったら、おどろくくらいに冷えていた。

「うなされてたから、起こしました。大丈夫ですか」
「……ちょっと……あの、待って、整理する」

 それからなまえさんはぶつぶつ言いながら、文字通り整理していた。
 これは夢で、こっちは夢じゃない。あれは違う、それは合っている。たまにあると聞いていた、この“整理の時間”に遭遇したのははじめてだった。握ってないほうの手で何かを指折り数えたり、一点を見つめたまま動かなかったり。夜中で眠いことも手伝ってひどく長時間に思えたが、途中で寝なかったのは時折小さな手が俺の手を縋るようにきつく握ってくれたからだ。水でも取りに行こうかと離れるタイミングを待っても、そんなときはやってこなかった。
 何を整えているのかはわからない。でもなまえさんにとって大事な時間であるということは理解していた。

「……」
「終わりましたか」
「うん、……ごめんね。眠いのに」

 へらりと笑って額にはりついた前髪を横に流す。朝はシャワーを浴びることになりそうだなと思った。

「大丈夫です。なんか飲みますか?」
「飲む。一緒に行く」

 ギュウ、とまた手をきつく握られる。小さくても細くても、鍛えているからそれなりには強い。二人でベッドを降り台所に向かう。

「冷たい水でいいですか」
「うん」

 だいぶ落ち着いたのが目に見えてわかる。一粒きりだが涙まで出ていたから、思っているより心配していた自分に今になって気がついた。
 ペットボトルの半分まで飲み、冷蔵庫にもどす。

「平気ですか?」
「うん、平気」
「うなされないで寝れそう?」

 途端にしょぼしょぼし始めた目を見て安心する。頷いたなまえさんが途中で寝てしまわないように急いで寝室へと引っ張った。