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「#幼馴染」のBL小説を読む
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「俺のこと本当に好きですか?」

 何度目だろうと考える。年下の彼氏はいつでも、いつまでも、自信がないようだった。わたし今どんな顔をしているんだろう。恵からは面倒そうにでも見えているんだろうか? 聞かれた回数だけで言えば確かに面倒なのかもしれないが、実際そんなことは思ったことはなかった。触ってほしそうに添えられた手をぎゅっと握ってやる。いつでも恵の手は冷え切っている。

「どうしたの」
「この前、なまえさんの大学の近くを通って」
「はい、はい」
「俺、大学……あんなに男が多いって知らなくて」

 高専と比べるとどこでも多く見えると思うけど……という言葉は飲み込んだ。恵がほんとうに深刻そうだったからだ。恵はすこし黙ったあと、ふかく息を吸った。

「心配になりました。すいません」

 吸ったわりには声がちいさくて、恵の心のなかを思うと、なんだかさみしい。空白が埋まることはたぶん、ないんだろう。わたしは恵ではない。恵のことは好きだ、でも深いところまでわかる日は絶対にこないのを知っている。恵じゃなくても、そう。
 恵はいつも不安な顔をしている。わたしたちが同い年であったなら、こんな顔は見なくて済んだのかな? 不安な顔はしないかもしれないけど、今のわたしが知ってるかわいい恵を見ることはないだろうなあと思う。わたしが年上で、恵が年下だから、今のわたしたちがある。かわいい恵を知ることができる。うつむいた恵のおでこがわたしの頭にコツンと当たった。顔をあげると、瞳がゆらゆらと揺れているのが見えて、キュウと胸がいたむ。かわいいかわいい、わたしの彼氏。

「好きだよ。だいすき、恵だけ好き」
「……俺もです。すいません」
「うん、いいよ。明日授業でしょ? そろそろ部屋戻りな」
「嫌です」
「わたしも一限だし遅刻できないよ」
「……じゃあ抱っこしてください。してくれたら、戻ります」

 高専のすみっこで、ふたりして何やってんだろう。ほんとうは、報告書を出しにきただけ。すぐ帰るつもりだった。でも、窓からわたしが校門をくぐったのを見て、いそいで靴を履き替えて外に出てきて、「高専来るなら、言ってください!」といちばんに眉を下げられちゃったら、もうなにも言えない。
 ぎゅっと力をこめて恵を抱きしめる。前よりすこし厚くなった身体がいとおしい。わたしのことを好きでいてくれているのがうれしい。いつも不安で自信のない恵がかわいい。恵はわたしの肩に顔を埋めて、長くてあつい息を吐きだした。

「なまえさん、好きです……」

 こんなに自分のことを好きになってくれる人は他にいない気がする。わたしも恵のことをいちばん大好きだと思う。恵がわたしに向けてくれているものを、おなじだけ恵も感じてくれていると、たすかる。ふるえる吐息がわたしへの愛を物語ってくれていた。顔をずらして真横のほっぺたにチューしてやると、恵はぐすんと鼻をならした。



210113