「キャプテン、キャプテン起きてください」 「……」 「ホテルの玄関に海軍がいます。出ないと。せめてパンツとズボンだけは穿いてくださいね」 眠いながらも無理やり開けた目は、なまえの左手の指輪をとらえてはくれなかった。能力で隠した小箱を引き寄せ、布団の中でのぞくと指輪は変わらずそこにいた。昨夜はどうやらやることやってすぐに寝てしまったらしい。最悪だとローは頭を抱えた。 「キャプテン」 「ロー」 「……ロー! はやく……」 「なまえ、左手出せ」 そうは言ってもなまえの左手はローが脱ぎ捨てた服を掴んでいる。取って落とそうと思ったが、裸のまま指輪をプレゼントするのはどうなのかと考え服を受け取り、なまえの言うとおり下着とズボンだけは穿いた。何もなくなった左手の薬指に無言で指輪を通すと、なまえは「えっ!」と驚いた。 「な……なんですか?」 「ホワイトデー」 「わたし何もあげてないですよ? それに今日泊まったし……」 「良いから素直に受け取れ」 「……」 「いらなかったか?」 「……ほしいです。でも水仕事とかあるし傷つけるかも」 「好きにしろ。でもおれの部屋では嵌めろ」 左手を眺めるなまえをローが見つめる。キラリと光る指輪を、手のひらと甲を交互に何度か見てからなまえは顔を上げた。 「ありがとうございます。うれしいです!」 「……もう出る。金は置いたか」 「置きました! ログはもう溜まったって連絡がさっきありました。補給もできたそうです!」 「鬼哭」 「はい!」 「元気だな」 「今元気になりました!」 本当は夜中のうちにスマートに渡したかったことは言わないほうが良さそうだと思いながら、ローはルームを展開した。 |