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 鳴ったインターホンになまえは顔をしかめた。こんな夜にいったい誰だ。怒りを覚えつつ覗き穴を見るとそこには死柄木がいてなまえは即座に玄関を開けた。

「ちょっと……何でいるの」
「アジトに来なかっただろ」
「今日は仕事だったの! 毎日行くわけじゃないから」

 サッと手首を引いて中に入れる。閉めるときにキョロキョロと周りを見たが人の気配はなくて安心した。急に来るんじゃないと叱ろうとして振り向くと、思ったよりすぐそばに死柄木がいて、ぬっと見下ろしてきていたのでなまえは驚いた。

「な、なに」
「今日は何日だ?」
「……3月14日?」

 つまんでいた何かを、なまえの目線より高いところからポトリと落とされて慌てて両手を差し出す。汚れる前は綺麗だったんだろうと分かる小さな紙袋だった。

「なにこれ」
「ホワイトデー。飯なに?」
「…………」
「食っていい? 腹減った」

 一ヶ月前に持った、意外とイベントごとを気にする男なのだなあという感想をなまえはまた持った。
 赤い靴を脱ぎ散らかして勝手知ったようすで部屋に入っていく死柄木を見つめる。あんな、当日に指摘されてから急いで買いに行ったようなものですら喜んでいてくれたらしい。食べている時はどうも表情が動かなくて、買ってきた甲斐がまるで感じられなかったが。紙袋を動かすと、カサカサと中身が動く。なまえはそっと微笑んだ。