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「#幼馴染」のBL小説を読む
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 できたばかりの傷が痛んで寝ようにも寝られない。何度も何度も体勢をかえて、目を閉じて、繰り返していたらもう二時間は経っていた。なまえはゆっくりと起き上がってから、びっしょりと汗をかいている自分に気がついた。ふかく大きなため息をひとつ吐いたあと、持たされた杖を使って立ち上がる。何をしていても痛みは消えないが、やはり足を使うのがいちばんつらかった。
 そっと部屋を出ると、外は真っ暗だった。いつの間にか夜になっていたらしい。部屋に当然窓はあるが、明るい、暗いにはまったく気がつけていなかった。じくじくと熱を持つ足をなんとか動かし、時間をかけて食堂に行くと明かりが漏れていた。たすかった、となまえは安心した。水をくんでもらえる。音を立てて食堂に入ると、キッチンにはキラーが立っていた。なまえの姿をみて、いつもは仮面で見えない顔がおどろいたようになる。

「なまえ、動けるのか!?」
「ううん……ねむれなくて、喉渇いて」
「待て、動くな。支えよう」

 たくましい腕に頼り、なまえは椅子に座った。すぐにキラーがコップに水をくんでくれたので、受け取って飲む。ふだんあまり水分をとらないことでキラーに注意を受けているが、今回ばかりは一気に飲み干した。軽い音を立ててコップをテーブルに置く。キラーはそれを心配そうに見つめた。

「すまない。そろそろ様子を見に行くつもりだった」
「ありがとう」
「痛みは?」
「ずっと痛い……ねむいんだけど、痛いからねむれなくて。汗すごいでしょ」
「気にするな。あとで体を拭いて着替えよう」

 右の太腿を切られ、左足首を撃たれたなまえはうごけなくなり、ここで死ぬかもしれないと覚悟したところでキラーが駆けつけてくれたのは今朝のことだ。直後、自分を撃った海賊の血を浴びた。安心からか、急にさっと頭が真っ白になり、そこからのなまえの記憶は曖昧だった。
 次に気がついたときにはもう船にいた。撃たれてからまだ半日しか経っていないのに、何日もねむっていないような疲れが体を支配している。喉がうるおって、頭のなかがクリアになると、なまえは今日が何の日なのかをやっと思い出して、むずかしい顔をした。もう日付が変わる。あの言葉は言っただろうかと思い出そうとしたが、それより先に足の痛みがなまえを襲ってしまった。

「キラー、せっかく誕生日なのに心配かけてごめんね」

 また別できちんとお祝いさせてと続けようとしたが、キラーの表情がつらそうだったから、なまえは口をつぐんだ。



200210