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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -



「入国できるポケモンのリストにモクロー系統載ってなかったからしばらく無理そうだよ」

 そう言ったら拗ねて布団から出てこなくなった。仕事にもついてこない。留守番中に家で腹いせにいたずらでもしてるかなと思ったけど、特に荒れたようすはなかったので「さすがに大人になったなあ」と膨らんだ布団をめくる。

「……なんだ、あんまり拗ねてないじゃん。もういいの?」

 背中にプスリと指を差し込むと、モクローはけらけら笑いながらこっちを向いた。

「いつになるかはわかんないけど、少しずつ増えてるみたいだしいつかは行けるよ。それまでにお金貯めてジムチャレンジのチケット取れるようにするからさ」

 前の家ではテレビを置かなかったけど、引っ越してなんとなく小さいテレビを買ったらモクローがいたく気に入ってしまった。リモコン操作も何回かわたしのを見ていたら覚えたらしく、小さな足でピッピッと聞かせながらチャンネルを回し、楽しそうな番組があったら座り込んでじっと見つめる日々。こんなに楽しんでくれるなら買ってよかったなと思うけど、飛ばなくなって太っちゃうなあと悩み始めたころに始まったのはガラル地方のチャンピオンカップの放送だった。どう見えたのかはわたしには分からないが彼の琴線にふれたらしく、行きたいと大騒ぎをはじめてしまったのが先日。
 行くことは構わないが外国にはホイホイ行けるようなものではない。ましてやポケモン連れは特に。その国に生息してないポケモンの入国が許可されているところもあれば、様々な手続きをしてやっと許可……のようなところ、入国リストに載ってないポケモンは全面禁止のようなところと様々だ。ガラル地方は禁止だった。それだけだ。

「ガラルに行ったらなにすんの」

 答えが分かりきっている質問だった。モクローは飛び上がり、テーブルに置いている小さなメガホンに顔を突っ込む。分かっているのに笑いが出た自分が面白かった。

「観客席で応援とあの歌うやつね。もう覚えた?」

 得意げにくるくる言うのを見ながら上着を脱いだ。夜まで拗ねてたら機嫌取りで疲れちゃうから出前でも取ろうと思ってたけど、どうやらしなくてよさそうだから晩ご飯は作ることにする。冷蔵庫をのぞくとモクローが慌てたように飛んできた。嫌いなものは食べたくないので事前にチェックしてつつくのがお決まりなのだ。

「好き嫌いは良くないよ」

 聞こえませんとでも言うように顔を背けられたので、ポケマメを押し付ける。ぐうとお腹が鳴って、急いで食べ始めた。
 入国許可はいつになるだろうか? わたしがどうこうできるような問題ではないけど早めにしてもらいたい気持ちはある。やっぱり楽しいことがしたい。ずっと一緒に過ごせるわけじゃないのを知っているから。サイズの大きいマメだったのに一瞬で食べてしまったらしく、次を催促されたので投げたらしっかりキャッチした。テレビでは録画した今年のチャンピオンカップの放送が流れている。



201009 ずっと隣にいてくれている