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ロー先天性女体化 百合です




 起こしにきたら、キャプテンは上半身裸のまま眠っていた。いくらひとりだからって、乳丸出しで寝るのはどうなんだろう。起こしにきたのがわたしだから良かったけど、これがペンギンかシャチならどうなっていたことか。何度か起こしに行っていた気がするけど……、どうもならなそうだ。毛布をかけて改めて肩を揺する。

「キャプテン、朝です。ご飯できてます」
「……」
「焼き魚ですよ」
「ん」
「あと、胸丸出しで寝てると形崩れますよ」
「見たの?」
「見られたくないなら服着てください」

 見たの、と聞くわりには怒ってなさそうなのが不思議だ。起き上がったキャプテンは、伸びをしながらあくびをした。さっきかけた毛布は当然落ちて、大きな胸がまた丸出しになる。寝起きも、美人は美人だった。動こうとしないキャプテンに、椅子にかけてあったパーカーをわたす。眠そうにしながらもそのまま着るのに違和感を覚えた。

「キャプテン……ブラジャーつけないんですか?」
「うん」
「どうやってその大きいおっぱい維持してるんですか?」
「知らない」
「うらやましすぎる」
「なまえはブラジャーつけてるの?」
「当たり前です」

 これまでのパーカーやコートの下はブラなしだったってこと? おそろしい。ふーんと興味なさそうなキャプテンは、おもむろにわたしのつなぎの胸元に手を突っ込んだ。

「!? なにを」
「ブラ見せて」
「は?」

 混乱していると、どんどんファスナーを下げられる。今日は起きたときから暑くて、つなぎの下は下着のみにしていた。どんどんあらわになる黒のそれに、時間差で恥ずかしくなる。太ってはいないつもりだけど、お腹の出ている出ていないよりは、キャプテンのよりだいぶ小さい胸がつらかった。キャプテンはじっとわたしの体を見つめる。検査や怪我の治療で全身ほとんど知られているけど、そういうことではなかった。

「へえ、黒。どっかの男の趣味?」

 いえこれはわたしの趣味です、と言いたかったが、するどい目にひるんでしまい何も言えなかった。たしかにわたしは島で男を買って抱いてもらったりはしたけど、特定の男を作ったりはしていない。海賊になったときから、そういう幸せは、わたしにはないと理解していた。
 キャプテンの、死と彫られた指が首から胸に向かって真ん中をなぞり、ブラに引っかかって止まる。ぐい、と軽く引っ張られた。

「次ブラ買うとき、私もついていく」
「……自分の買うんですか?」
「なまえのを選ぶ。私の選んだ色をつけて」
「……??」
「いい?」
「こ、……これからきちんとブラつけてくれるって約束してくれるなら……いいですよ?」
「約束する。じゃあ私のブラはなまえが選んで」
「いや、それはキャプテンの好きなの選んだほうがいいです。かわいいの沢山あるし、キャプテンは知らないかもしれないけど、ちょっと高いのを着ただけで気持ちがすごく上がるんです。帽子とおなじ柄とかきっとあり……」
「なまえが選んで」

 ぴしゃりと言われてしまい、口を閉じて頷いたらキャプテンは笑顔になった。朝からよくわからないことばかりだ。胸丸出しのキャプテンを起こしに来ただけのはずなのに下着の話になっているし、次の島での予定がもう決まってしまった。引っかかった指はいつのまにか胸全体を包んでいて……いくらキャプテンで、お医者さんで、女同士だからって……キャプテンら一体何を考えているんだろう? でも、今いちばんわからないのは、この状況を嫌だと思っていないわたしだった。強い力で腕を引かれ、ベッドに倒れこむ。至近距離のキャプテンからはとんでもなくいい匂いがしてきて、くらくらした。大きな胸が、わたしのブラ越しにくっついている。考えるのも面倒になってきた。キャプテン、と情けない声で彼女を呼ぶ。返事はなく、かわりに頬にキスされた。もう何がなんだか。朝ごはんは食べられないのかもしれない。お腹が鳴りませんようにと祈った。



191017 乱れる