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「#幼馴染」のBL小説を読む
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- ナノ -

「泣かないで」
「だってえ!」
「ほらハンカチ。目腫れるよ」
「……なまえってさあ、大人だよね……」
「はい?」

 初めて言われた。しくしくと涙が止まらない友人の目元にハンカチタオル当てながら、ひっそりと首をかしげる。

「やさしいし……彼氏と長く続いてるんでしょ?」
「まあ……そうですね」

 それが大人かと言われると別にそうではないと思うけど……。今日のご飯は彼氏と別れた友人を慰める会だったので、自分の彼氏のことを出されるとなんとも言えなくなってしまう。引っ換えとっかえというわけではないけど、友人は恋人関係がうまく、そして長く続かない傾向があった。その頃から、こういうことがあると絶対にご飯を食べている。

「喧嘩とかしないの?」
「したことない……多分」
「マジ? 神様?」
「聞いといてその反応」
「だって、そんなことある?」
「向こうが優しいからだと思うよ」
「へえ」
「へえて……」
「だってなまえの彼氏のことよく知らないし。ムカついたこととかないの?」
「…………」
「うわ〜無いんだ! すごいね。年上だっけ」
「うん。でも年上だから優しいとかムカつかないとかそういうことではないと思うよ」
「人によるってわけですね? なまえさん」
「そうですねえ」
「はあ……そうだよねえ」
「……涙止まってないよ、もう帰ろう。心配だから途中まで送るよ。ほら」
「ハンカチ新しく買って返すね」
「いやいいよ」
「だからまた遊んで。ファミレスで豪遊とかしようよ」
「ハンカチなくても遊ぶよ。次会ったときに洗って返してくれたらいいし」
「……」
「え、何……」
「なまえ〜!! もうしばらく彼氏いいや〜〜なまえさえ居れば〜〜」
「酔ってる? お酒飲んでたっけ?」

 今回は許せないことがあって喧嘩して、別れたらしい。喧嘩。喧嘩かあ。本当にしたことないな。泣いたことはある。先生が優しいからそうならないだけで、実は我慢させてるのかもしれない。今度会ったら聞いてみようか。

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「したことないかもな」
「うん」
「したいのか?」
「いや全然したくないけど、先生優しいから我慢してるかな? って思った。なんか不満とか、ない?」
「ない」
「即答」
「なまえはないのか」
「んー、ちゃんとご飯は食べてほしいとか?」
「……」
「でも、これ! ってのはないかなあ。ご飯は別に、不満ってよりは希望だし。先生が大丈夫ならわたしが口出すことでもないし」
「……仲良いに越したことはないだろう」
「うん」
「こういうのは互いの努力だ。あくまで俺たちは他人だからな、付き合いが長くなってだいぶ緩くはなってるが線引きも大事。分かるだろ」
「はい」
「俺たちは偶然上手くいって、爆発してないだけだ。……爆発しなくても衝突は起きるがな」
「うん。だから、不満あったらすぐに教えてね」
「ああ、ひとつあった」
「えっ! さっきの即答はなんだったの」
「朝はきちんと起きなさい」
「おっ……起きてるよ! 先生がいないときは! 何個もアラームかけてるし」

 歯を見せて笑う先生はなんだかしたり顔で可愛くて、それ以上は何も言えなかった。