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「うわ」
「あはは!」
「風呂は?」
「入ってない。鼻詰まってて息できないから寝れなくて」
「昼よりひどいな」

 なんとか化粧だけは落としたのか眉毛がなかった。マスクと、気に入ってるとか言っていた記憶のあるもこもこしたパジャマがよく目立ち、確実に具合が悪くなっているのが見て取れる。こんなことになるのならさっさと早退させれば良かったが、もう遅かった。行き道に買った箱の保湿ティッシュとスーパーの袋を玄関に片手に持ち替えて、なまえをベッドに追いやった。

「ほら、ティッシュ」
「ありがと〜。鼻の下擦れるところだった」
「風呂、溜めたのか?」
「溜めてない」
「入れそうだったらあとで入ろう。明日は休めよ」
「うん、休めって言われた……あ、先生もマスクつけてね」

 前髪は汗でまとまっていた。額に手を当てると少し熱い。買ってきた冷却シートを無理やり貼ると、もう立派な病人だった。

「湿気飛ばしてから服着たいのは分からなくもないが、そのまま寝たら元も子もないだろ」
「ごめんなさい」
「反省してるか?」
「あんまりしてない」
「今日は来れたからいいが、学校も出動もあるからな」
「うん。お疲れ様です」
「心配してるんだ」
「うん」
「……分かってるか?」
「せんせ」
「なんだ……」
「ね〜〜、先生」
「なんだって言ってる」
「来てくれてほんとにほんとに、ありがとう」

 なまえはベッドで寝そべり、俺はその傍に座って無理やりな格好で抱きつかれる。あんまり触るな。まだ着替えてないんだ、汚れるだろ。そう思ってるのに離せなくて頭を撫でた。少し明るめの茶色に染めた髪はすっかり大人になったことを意味していて、認識するたび泣きたくなるのをきっとなまえは知らない。もう逃してやれそうにない俺のことを、知らない。
 間もなく寝息が聞こえてきた。寝れないんじゃなかったのか、 そう聞いても返事はない。なくていい。寝れるのならそれが一番だ。離れて風呂を溜めて、買ってきたものを冷蔵庫にしまいたいがそうもいかない。腰に回っている熱から、俺が離れたくなかった。

「……なまえ」

 先生って呼んでくれ。