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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -

!原作体育祭の話です





 気を抜いていたので、爆風がすべてを包んだとき飛んで行きそうになってしまった。風には強いはずなのに。とんでもないものを見てしまった気がしてさっと血の気が引く。先生のクラスの生徒たちの試合が、まさかこんなことになろうとは。

 体育祭に来ていた。先生の生徒が見てみたかったのと、踏陰くんに会いたくて先生にお願いしたら「別にいいよ」と言われたから遠慮なく来た。この前の襲撃の影響で、警備はしっかりとされていた。
 障害物競走は昔わたしもやったから楽しんで見たし、騎馬戦はいよいよ人数が減るのもあってバチバチ火花が飛ぶようなのをはらはらしながら見た。遠くからでも踏陰くんはすごかった。
 そしてなんでもありの一対一の試合、この前入学した子どもとは思えないぶつかり合いにわたしは圧倒されてしまっていた。会える時間があったら差し入れしようと思ったゼリーと、林檎を入れた袋をなんとか風から守る。中央のステージは瓦礫の山みたいになっていて、観客席からはどうなったのかよく見えない。ここまで激しいのは現場でもそうそうない、みたいなものを高校で目撃している事実に恐怖のようなものを覚えた。
 今年受け持った二十人を、まだ一人も除籍してないことに気がついたのは、プログラムが全部終わってからだった。

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「なまえさん」
「あっいた! 会えて良かったあ」
「来てたんですか」
「うん。三位入賞おめでとう!」

 終了後会えないかなあと思ってうろうろしていると、目の前にパッとダークシャドウが現れた。ついていくと踏陰くんもいた。疲れた様子だった。三位だからそりゃ疲れもする。

「早めに会えたらよかったんだけどこれ、林檎」
「いいんですか?」
「もちろん! 切ってなくてごめんね」
「いえ…嬉しいです」
「踏陰くん強いんだねえ。ちゃんと戦ってるところって見たことなかったね。わりと付き合いあるのに」

 袋を渡すと彼は分かりやすく喜んだ。かわいい。

「でも、爆豪には…負けたので。まだまだです」
「そっか」
「……あの」

 ダークシャドウが受け取ったのを、体に戻るのと同時に踏陰くんが受け取って、わたしに問いかける。

「なに?」
「相澤先生は平気ですか」
「うん、大丈夫だよ。多分もうすぐ包帯も――」
「なまえさんは?」

 落ちていた視線を上げる。心配そうな目がこちらを見ている。

 込み上げてくるものがあった。なんというか、嬉しかった。じんわりと心臓が温かくなるような気さえした。話したことはないけど、多分彼は、わたしの色々を、ぼんやりながら知っているのだろう。親御さんが話したのかもしれない。別にそのことはいい。
 担任である先生のことを心配するのは当たり前にしろ、わたしのことまで心配してくれている事実が、わたしには嬉しかったのだ。存外わたしは、元気みたいだ。

「わたしは大丈夫」
「……、それなら、良かった」
「ありがと! 先生今、ご飯ちゃんと食べてるからきっと顔色いいよ。見てみて」
「包帯で見えません」




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