「オールマイト!!?」
「声が大きい」
なまえは人並みにヒーローについて詳しかった。しかしオールマイトが雄英高校に赴任するという話は知らなかったらしく、そう教えたら驚いていた。ナンバーワンに教えてもらえるのって、すごいね。狭いベッドでなまえは注意を受けて小さく言う。
「昔会って話したことある」
「…へえ」
「でも緊張して何話したか覚えてない」
彼女なら会う機会があって当然だと思った。会ったことがあるということは、救出されたなどではないということだろう。
目が慣れてきて暗い中でもなまえは見えた。興味津々に聞いてくる。
「なに教えてるの」
「ん〜…実技」
「なんか分かる」
「明日、俺と13号とオールマイトさんで授業」
「三人がかりで?」
「USJだからな。広いし」
眠くなってくる。生徒のときでも、教師になっても、新学期はやはり少し疲れが出やすい。何を話しているのか分からなくなってきた。目も開けていられない。なまえは何かを言っているが、あまり聞こえなくなる。絡んだ手から力が抜けていく。
「先生? 寝た?」
「……」
「…」
――気をつけてね。俺にはその言葉が届かない。今日ほどそれを聞きたかった日はなかったというのに。
(171216)