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 好きになる要素もなかったので元々病院は好きではなかったけど、ある一件をきっかけにわたしは病院嫌いとなった。しかし生きていればどこかしら体を悪くすることもあるので、重い腰を上げて仕方なく行っている。行きたくないと渋ると、先生がたまに悲しい顔をする。
 今日はわたしが悲しい顔をしている。

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「みょうじさんですか?」

 伝えられた病院に、言われたとおりタクシーで行った。会社に許可を貰って仕事を放って、荷物を適当にまとめたまま出てきた。病院の正面玄関には一人看護師さんが立っていて、わたしを見て慌てて駆け寄りながら名前を確認してくれた。マイク先生とミッドナイト先生、そこまでやってくれたのか。昔から変わらず、彼らは優しかった。
 名前の確認に頷くと、案内しますよと言ってもらえた。わたしはとぼとぼと歩き出した。

「こちらです。まだ眠っていますので、お静かにお願いしますね。何かありましたらナースコールを」

 看護師さんとやってきたところは、明らかに重傷の人が運ばれるような――そんな部屋だった。返事もできずに頷くと、看護師さんはさっと元来た廊下を戻っていく。
 こんな部屋に知り合いが寝ているのを見に来るのは、二度目だ。肩にかけた鞄がずり落ちたのもそのままに、手汗の酷い自分の手をドアの取っ手に近づける。落ちた視界のなかのその手は、ひどく滑稽に震えていた。

「…先生…?」

 わたしが開けなければこの扉は開かない。音を立てないようにそっとスライドする。ピ、ピ、と機械の音がした。
 先生は眠っていた。包帯まみれだ。生きているのが不思議なほどに、いつもの先生ではなかった。泣いてしまいそうだった。



(171217)