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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -

「もしかしたら、担任になるかもしれないねえ」
「なまえさんの恋人がですか」
「うん…でも、秘密だよ。すぐ分かると思う。黒くてちょっと怖い感じ」
「名前は?」
「ないしょ。本当は担任かもっていうのも喋っちゃだめだから、秘密にしてね」
「はい」
「がんばってね。踏陰くんはきっと良いヒーローになるだろうねえ」





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 合格を報告した際、自分のことのように喜んでくれたあの顔を思い出す。親が仕事の関係でなまえさんを知り、なまえさんが雄英に通っていたというのでその縁で謎に知り合った社会人の女性。
 何度か聞かされていたなまえさんの、年上の教師の恋人。なんと今度雄英のヒーロー科一年の担任になるそうだ。自分のクラスはまだ分からないが、二クラスあるので半々の確率。いやまさか…とは思ったが半々なのでそのまさかが現実になるのは普通にあり得ること。

「どしたあ常闇」

 本日から級友となった、前の席の瀬呂がいつの間にかこちらを向いていた。新入生の新学期はやることが多い。今はプリントを配布している。プリントが多いため配布の時間も長い。多少ざわついても叱られないタイミングを狙うとは、早速先生を理解し始めているのだなと思う。

「いや…」
「担任怖そうだよなあ。黒いし」
「……」

 なまえさんの言葉どおりの感想を瀬呂が述べるので、確信してしまう。この担任、相澤先生はなまえさんの恋人で間違いなさそうだ。B組の担任の姿はまだ見てないが、合っていると思う。確かに恐怖を感じた。

「調べたら三十歳だってよ。思ったより若いな」
「……」
「一生独身っぽいよな!」

 なまえさんとの約束があるので言わない、とも言えないので少々居心地が悪い。担任が知り合いの女性の恋人、だから何だという話ではあるのだが事あるごとに思い出してしまいそうな未来が見えたので、あまり好ましくはない。
 この常に不機嫌そうな、おそらく厳しいであろう人が、自分たちの担任をしている裏側でなまえさんの恋人もしている。相澤先生のことをまだ全然知らないが、なんというか…人間らしいのだなと思った。なまえさんのことを知らなければ、俺も瀬呂と同じように独身だと思っただろう。でも実際はそうではなくて、いずれあの二人は…。




(171221)