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- ナノ -

「これ」
「何」
「なまえから」
「あら〜悪いね。なまえちゃんはご実家?」
「しばらく年末年始に帰ってなかったから帰るって」
「そう。一人で帰るって連絡来たとき別れたのかと思った」
「……」
「なあんだ、良かった〜。なまえちゃん、良い子だしかわいいし、若いし、逃がしたらだめよ」
「…分かってる」
「今年から社会人?」
「うん」
「仕事は?」
「ぼちぼち…。一年目だしどうもこうも」
「ふうん。ご飯は?」
「食う」
「なまえちゃんと一緒に住まないの」
「……ん〜〜…」
「今どうしてんの」
「家行ったり来たり」
「無駄!」
「うるせえよ」
「チャチャっと一緒に住みなさい。お金あるんでしょ」
「あるけど」
「けど何」
「……」
「なまえちゃん何年一人で暮らしてると思ってんの。アンタより長いんだからね」
「知ってるって」
「相変わらず仕事以外の決断はできないんだねえ」

母親というものは、子供が離れたところで母親であることは変わりない。図星を突かれ本日何度目かの黙りを入れたら笑われた。睨むと効きませんとばかりに逃げられる。そんなん俺が一番分かってる。

「まー好きにしたらいいわ」
「絶対それなまえに言うなよ…」
「言うわけないでしょ。そもそも最近会ってないし」
「…無理だって」
「別に連れてこいだなんて言ってない。なまえちゃんにも生活があるんだから。大体彼氏の母親に会いたいって言われるの迷惑でしょう」
「うん」
「あんたが言うとムカつく。ほらこれテーブルに並べなさい」

これでも親が一番静かなのだと思うと目眩がするようだ。隣に並んだ母親はなまえより小さい。これからは、親といるよりなまえといるほうが長いのかもしれないと考えたら、柄にもなく切なくなった。その分俺の荷が重いということだが、それはそれで良いのかもしれない。あの日から俺は、なまえを守ると決めたのだ。それが決定的になる日を、ここにいる母親とリビングにいる父親は待ちわびている。
なまえに関することであるからなまえの意思が何よりも最優先なのだが、急がなければならない理由があったことを忘れていたので、今回の実家帰りはまあまあ実りあるものだったかと、ぼんやり感じた。なまえは今何をしているんだろう。




(171215)