「ヒミコちゃん、これどうぞ」 「? なんですか?」 「バレンタインの友チョコ」 ショッキングピンクの包みと自分を交互に行き来するトガの視線を、なまえは最後まできちんと受けた。 「私に?」 「うん、そのピンク見て絶対これヒミコちゃんにあげようと思って。かわいいでしょ」 「……うん、カァイイ……」 「弔くんには青のラッピングでねえ、これは荼毘くんも黒霧くんも同じなんだけど……ヒミコちゃんだけピンク」 まだ渡していない残りの青い包みを鞄からチラリと見せてくるなまえに、トガはとてもうれしくなった。もしかしたら私に一番に渡してくれたのかも、と思ったのだ。 「きちんとしたお店のやつだから美味しいよ。開けてみて」 「開けていいんですか?」 「もちろん」 ピンクがかわいいとなまえが言って、そのピンクをトガがビリビリと破いて開けた。箱の蓋を開けると、さまざまな形と色をしたチョコレートがトガを待っていた。それはキラキラと輝いて見えた。左上の一粒に手を伸ばして、口に入れる。甘いものを食べたのは久しぶりで、なんだか不思議な感覚がした。でも、美味しい。トガは頬にに手を添えた。なまえはにっこりと笑う。 「美味しい! なまえちゃん、これ美味しいよ。ありがとうございます。大事に……大切に食べます」 「どういたしまして」 箱からポロリとピンクの切れ端が落ちていったが、二人はまったく気がつかない。 |