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「やる」

 そこそこ膨らんだビニール袋を膝のうえに落とされた。中をのぞくとたくさんチョコレート菓子が入っていて、なまえは笑顔を浮かべる。それを見てスモーカーはしずかに息を吐いた。

「これ好きなやつ……覚えててくれたの?」
「まァな」
「ワ〜、うれしい。ありがとう」

 封を開けてすぐになまえはひとつ食べた。口に広がるチョコレートが疲れた体と頭を癒してくれる。ここ数日海賊が多くて本部に引きこもってばかりではいられなかったのだ。ろくに食事をとっていなかったのも、身に染みる理由のひとつかもしれない。
 スモーカーはそれを知っていたので差し入れた。なまえの好きな菓子だったかは、すこし賭けだった。店に行くたびに目について、その理由はなまえが好きだと言っていたからなのだが、確信は持てていなかった。

「おいしい」
「良かったな」
「スモーカーも食べる? あーん」
「いらん」
「嫌いだったっけ?」
「そうじゃねェが……」
「じゃあ、ほら、口開けてよ」

 仕方ないというふうにスモーカーは煙草をはずし、屈んで口を開ける。すると四角いチョコをつまんでいた指はなまえの口に向かっていった。消えたチョコレートになまえはしたり顔で微笑む。スモーカーは眉を寄せながら、わざわざなまえの目の前ではずした煙草を吸って、顔に煙を吹きかけた。「くさい!」揃えた手で顔の前を急いであおぐなまえに、今度はスモーカーが微笑んだ。