はいチョコレート、と包みを渡すと、ロシナンテは目を輝かせながら高々とかかげて、それからクルクルとまわった。さっきまで手元にあったそれがもう見上げないといけないような高さにまで遠くなっているのが不思議になる。 「ロシナンテ、喜んでくれるのはうれしいけど転ぶよ」 「イテッ」 「……」 これまで何度も目の前で転ばれているが、一度たりとも巻き込まれてないのもまた不思議だった。一瞬でロシナンテは視界から消え、次見たときにはもう地面に投げ出されていた。コロリと向こうに転がる包みを、わたしは冷静に、ロシナンテは青ざめたようすで見つめる。すぐに立ち上がったけど、おおきな体はまた倒れてしまった。無意識に出たため息はなにが理由なんだろうとひとりで考える。起き上がることは一旦あきらめたのか、腹這いで包みのところまで移動するロシナンテに付き合ってやる。ガサガサと開けると、中身はやっぱりぐちゃぐちゃになっていた。 「なまえ……悪ィ」 「いいよ。食べなくていい」 「いや食べる。地面に落ちたわけじゃねェし。地面に落ちても食べるけどよ」 「そう。今食べたら? どうせまた立ち上がろうとしたら転ぶよ」 「お前おれのことどれだけドジだと」 「いっぱいドジ」 じっとり睨まれるのを無視してチョコをつまんで食べようとしたら、おれが一番に食べるとばかりに手首を掴まれ口の中に入れられた。指まで。ロシナンテくんは食べ物の区別もつかないんですかと言おうとしたけどあまりにも美味しそうに食べてくれているので黙ることにした。 |