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「いらないって言ってたから用意しなかったんだけど……」
「……」
「もしかして“チョコレートは”いらないって意味だった?」

 言わなくてもわかる関係、なんていうのは幻想だ。すきときらい、うれしいとかなしい、うまいとまずい。言わなきゃわからないんだから思ったこと、伝えられること、言いたいことはぜんぶ言おうという約束をして、結果これだった。勝己がめずらしくかなしい顔をしている。さっき家に届いた大量の段ボールには、勝己宛のチョコレートがしっかり梱包されていた。ファンからの贈り物だ。これがあるからいらないと言ってたのであって、バレンタインのプレゼント自体がいらないわけじゃなかったらしい。

「ごめん! 明日買ってくるよ。チョコ以外ね、なにがいい?」
「メシ。外で食うぞ」
「決めるの早……なに食べるの? 辛いやつ?」
「お前が食えねえだろうが」
「そうだけど、わたしメインじゃないからべつに気使わなくてもいいよ」
「気なんか使ってねえよ。じゃあ焼肉」

 焼肉はわたしの好物なんだけどな、と思いながらも気は使ってないと言われたからそれ以上は言えなかった。ちらりと勝己を見ると、文句あんのかとばかりに見下ろされたので思わずサッと目をそらす。外食かあ、久しぶりだ。最近はずっとひとりで食べてたから、勝己とご飯を食べられるのもうれしかった。