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「それは?」
「ビスケットとマシュマロとチョコレート! あと、竹串」

 かしこい荼毘はこれから何が起こるのか一瞬で分かった。スーパーの袋を漁り、なまえは準備をすすめる。隙をついて帰ろうかとも考えたが騒がれるのも面倒だったし、なにより別にいいかと思っている自分に気がついてしまっていた。
 なまえはせっせといくつかのマシュマロを竹串に刺す。そして笑顔を向けた。

「スモア食べよう! 美味しいよ」
「火はどうすんだ」
「この辺たき火禁止だから、荼毘くんよろしくお願いします」

 もうなにか言う元気もなかった。薄暗く汚い路地裏では、火を起こせばそこが一際目立つ。誰かを燃やすわけではなく、ただただマシュマロを焼いてやった。白い面にじわじわ焦げ目がついていくと、なまえは目を輝かせた。しかし段取りが悪く、先に出しておけばよかったビスケットなどを準備するのに手間取っていたのを助けた。俺は一体何をしてるんだと呆れながら、竹串を持ち自分の炎で炙ることになってしまった。

「見て〜、チョコがマシュマロの熱で溶けてる」
「早く食え」
「うん……ん〜〜、おいしい! 荼毘くんも食べる?」
「食いかけなんか食うかよ」
「新しく作るよ。これ、ずっと食べたかったの! ありがとう」

 ほんとうに何をしてるんだろう。今度は最後までなまえが炙ったマシュマロを、チョコレートと一緒にビスケットで挟んで手渡される。甘くて食べられたものじゃないと最初は思ったものの、荼毘は最後まで食べた。なまえは五個食べた。