×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

「毎年用意してるよ、取りに来ないのはあなたのほう。わたしはあなたのところには行けないんだから、そっちから来るのが当然でしょ?」

 おれには合わない扉の前で去年の言葉を思い出す。小さな紙袋を投げつけて、涙を溜めながら顔を背けたんだったか。そのままベッドに潜り込んでしまって、そこから出すのに相当苦労した。そう、そうだった。ひとつ息を吐いてサングラスをかけ直す。寝てるか。寝てるだろうな。音を立てず家に入り、壁掛け時計を見る。とっくのとうに日付は変わっていて、家主はいつものベッドで死んだように寝ていた。すぐそばのゴミ箱にそれらしきものが捨てられていないかを確認してまた息を吐く。

「……今年も間に合わなかったなァ」

 当日でなきゃこんなもの意味がないと言われたのはいつだっただろう。食われているのならまだいいほうだった。ずっと宙ぶらりんで、どう名づけたらよいのかわからないこの関係にいつまでも浸っていたいような気持ちのまま、もう数年。ぼんやりとしたこの空間はなんだかんだで居心地がよかった。
 すぐそばに腰を下ろし、顔を近づけた。目尻を親指でなぞる。当然濡れた感触はない。なんとなく唇を這わすのははばかられた。