突然のハッピーバースデー

※狡朱だけど狡噛がでてこない





「誕生日おめでとう常守監視官」
「誕生日おめでとうございます!」
「おめでとう」
「朱ちゃんおめでとう」

一係のオフィスにつくといつもと違う言葉で出迎えられる。
今日は朱の誕生日だった。
まさか一係の人が自分の誕生日を覚えてくれているなんて思っていなかった朱は驚いた。
プレゼントの花束を受け取り、ありがとうございますと礼を言った。

「常守監視官」

皆から一歩出て言うのは新人の霜月監視官だ。

「どうしたの?」
「女子みんなで誕生日ケーキ作ったんです」
「ほんとに?ありがとう…!」
「宜野座さんも手伝ってくれたのよ」
「余計なことは言うな唐之杜」
「宜野座さんもありがとうございます」
「お昼に食べましょう」

お父さん、お母さん、誕生日なのに家に帰れなくてごめんなさい。
だけど私は仲間―と言ったら間違いなのかわからないけど、沢山の方に祝ってもらえて幸せです。
家に帰ったら両親に連絡しよう。
朱はそう思いつつ珍しく平穏な1日を過ごした。

***


自宅につき、ドアを開くと現れるホログラムの朱の部屋。

「お帰りなさいませー!今日も1日お疲れ様!」
「ただいまキャンディ」
「突然ですがお手紙が届いていますよー」
「手紙?私に?」
「そうです!只今お持ちしますねー」

今ごろ手紙なんてコストのかかる物を送る人がいたのか。
ああそうか両親か―そう思ったがどこか違う、手紙で思い当たる節があった。

「お待たせしましたー」
「キャンディ、差出人は?」
「お調べしましたが、分かりませんでした…申し訳ありません」

質素な白い封筒を裏表確認したが名前らしき文字は見当たらなかった。あるのは自分の名前と住所だけである。

「もう一度お調べしますか?」
「いいよキャンディ、ありがとう」

おそるおそる、封筒から手紙を取り出す。
開くと黒一色で丁寧に書かれた文字があった。
それは数ヶ月前に貰った手紙の文字にそっくりだった。
一枚に短文であるが心のこもった言葉が綴られていた。

「ど…どうされました?どこか具合でも…」
「いいの、キャンディ」
「あっ!最近話題のお薬を試されてはいかがでしょう、これは…」
「いいの、キャンディ…ありがとう」
「…」

ぺこり、と一礼してホロアバターは消えた。

彼の手紙で泣くのは二度目だった。
狡噛慎也は、本当に狡い人だ。





13*05*04
朱ちゃん誕生日大遅刻

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