皆が笑ってくれる日

カーテンの隙間から零れる朝日に眩しさを覚えながら、ゆっくりと目をあける
嗚呼、今日は随分と良い天気だな、なんてもう一度閉じてしまった目をこじ開けながら思う

「…おはよーさん、カブリエル」

愛しのカブリエルを指先で一撫でしてからゆっくりと己の体を伸ばす
今日も今日とて俺の体調は絶好調
んんーっ、絶頂!

カーテンを開けてからリビングに降りる
朝ご飯はトーストか
パンの香ばしい匂いとコーヒーの匂いを胸いっぱいに吸い込むと、頭が一気に冴えた気がした
今日は本当に調子が良い

「あ、蔵ノ介おはよーさん、誕生日おめでとお!」
「くーちゃんおめでとう!」
「おめでとさん、蔵ノ介」
「蔵、おめでと」

おかんが、友香里が、おとんが、姉ちゃんが

「おお、ありがとさん!」

祝ってくれる

ああ、俺もまだまだガキやんな
朝から調子が良いと思ったら、無意識のうちにでも誕生日を楽しみにしてたなんて
誕生日だからって朝から浮かれるなんて

…まぁそんな風に苦笑を浮かべてみてもやっぱり嬉しいものは嬉しくて
こうやって家族全員に笑顔で言われるだけで、体調だけでなくテンションも絶好調になる

”俺が生まれた日”、よりも”皆が笑ってくれる日”、やから俺は誕生日が大好きや
ガキみたく浮かれるのもしゃーないやろ


「白石!おはよーさん!!」
「お、謙也おはよ」
「ほら!プレゼントや!!」
「!」
「おめでとう!」

通学途中に会った謙也も祝ってくれた
それはもう眩しい程の笑顔で

渡された包み紙を開ければ、中身はカブトムシの形をした消しゴムやった
…まぁなんちゅーか、謙也らしいな

「ありがとな、謙也」
「おん!」


「…うは、またすっごいなぁ」
「…ほんま、ありがたいなぁ」

学校に着くと、とりあえず靴箱の中っちゅーかもう溢れてるけど、プレゼントの山
それらはどれも俺の誕生日を祝うもので

ふと視線を感じてそちらを向けば、コッソリとこちらを伺っていた女の子達と目があった
俺と目が合った所為か、頬を真っ赤にさせて逃げようとした女の子達に

「ありがとうな!」

そういえば、彼女達はこちらを向いて恥かしそうに、けど嬉しそうに、笑った


「白石君御誕生日おめでとう!」
「おめでとさん白石!!」

教室に入るとこれはまた凄いプレゼントの数
机に乗り切らない程なんて、と思わず笑ってしまう

「皆ありがとうなぁ」

クラスメイト、男も女の子も皆が笑って声をかけてくれる
普段話す事が少ない奴まで

「はは、幸せモンやなぁ、俺」


部活に行くと更に凄い

部室の扉を開けていきなり、パンパン!とクラッカーの後に

「「「白石誕生日おめでとう!!」」」

なんて言われたら流石の俺も

「あはは!あの白石がアホ面しとるで!」

…そうなるわけで

「…お前等……いつの間に」

本当にいつの間に用意したのか、部室は色々飾り付けてあるし、ケーキまでしっかり用意してあるし

「皆で6限サボったんやで!!」
「おい」

ドヤ顔で言い放った金ちゃんに速攻で返せば部室は笑いに包まれる

「銀サンもサボったん?…」
「今日は特別な日やさかい、仕方あらへん」
「千歳も居るし…」
「白石には世話になっとるたい」
「財前も…」
「…ま、しゃーないから参加したりますわ」

「皆、蔵リンが大好きやねんでー!!」
「しょうがないから今日だけは小春の愛をおすそ分けや白石!感謝しぃや!!」
「ほら、いつまでもそんなアホ面せんと、イケメンが台無しやで?」

小春も、ユウジも、小石川も笑ってる
皆、俺を祝ってくれてる

授業をサボってまで準備してくれたのか、と思うだけで
全員で用意してくれたのか、と思うだけで

「何スか部長、顔緩み過ぎっスわ」
「うっさいわ…嬉しすぎるんやからしゃーないやろ」

俺の言葉にまた皆が笑う
俺に負けない位、嬉しそうに

「ほんま、ありがとうな!皆!」


4月14日は俺の誕生日
皆が俺を祝ってくれる、笑顔で居てくれる
だから、大好きや

”俺が生まれた日”、よりも”皆が笑ってくれる日”やから、

「ほんっま俺は幸せモンやわ」

大好きや



[ 9/21 ]

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