桜の花が揺れた

「行くのかい?」
「はい、とりあえずはイタリアで学ばなくてはいけない事がたくさんありますから」

3月上旬にも関わらず、今日は桜が満開に咲き誇っていた
これも温暖化の影響なのだろうか、とさほど興味の無い事とふと考えた


今日でオレは大学を卒業する
中学の頃は大学なんて行けるなんて思ってもいなかったのにソレが今は、と改めてリボーンには感謝せざるを得ない

「そう…彼等は?」
「ああ、山本や獄寺君達ですか?」

疑問系で返すと肯定も否定もせずにいつものあの、なにものにも変え難い瞳で見られた
流石にもう超直感など使用せずともわかる
この瞳は肯定の意

「獄寺君は一緒にイタリアに行きます、山本は色々落ち着いてオレがこっちに戻ってくるまでは自由に自分として過ごすそうです…お兄さんもそう、ランボは一緒に行く事になるでしょう……骸とクロームは、…わかりません」

オレが言い終えたのと同時にザア…と辺りの木々が鳴った
それと同時に舞い落ちいたたくさんの桜の花びら達も舞い上がる
舞い上がった桜の花びらは風に吹かれてバラバラに散っていく

「雲雀さんは…、どうするんですか?」

そんな花びら達を見ながら、オレは独り言のように尋ねた

「………」

同じ様に花びらを見ていた雲雀サンはゆっくりと1つ瞬きをしながらオレに向き直った

「僕は何年経とうが僕だよ、沢田綱吉」
「…!」

何の感情も映していないように見えるその表情は、何故かオレの心を酷く落ち着かせた


大学を卒業…
小学、中学、高校…と、卒業という行事を重ねてきたが
今までの卒業は”また次がある”と、何処かで安心する事が出来たのだ
だが、大学はそうはいかない
今まで一緒に学んできた人達の大半と離れてしまうのだ
それぞれが各々の道に進む、バラバラに…

オレは何時からか1つの道として定まってしまっていた
”ボンゴレのボスを継ぐ”
という、これまた中学の頃の自分ならありえない道に進むことにした
数日後にはこの住み慣れた並盛を離れ、イタリアのボンゴレ本部に居るのだ
正直、不安にならないわけが無かった

ボンゴレのボスとしてやっていく事で、
離れてしまう事で、

…変わってしまうのではないか、と


”僕は何年経とうが僕だよ”

昔から、1つの志を胸に己の道を進んできた彼らしい返答だ
群れる事が嫌いな浮雲

だが、その言葉は変わる事を恐れていた自分に酷く安心を与えた

「雲雀サン、ありがとうございます」
「…君は、君の信じる道を進めばいい」
「はい」
「……じゃあ、僕は行くよ」

きっと今のは雲雀サンなりの激励だったんだと思う
踵を返し、この場から立ち去ろうとするその背中に軽く頭を下げて、小さく

「これからもよろしくお願いします」

と、呟いた
彼には絶対に聞こえないように、小さく、小さく

文句やへそ曲がりな事を言いながらも、なんやかんやいつも助けてくれるその人はやっぱり、オレには紛れも無く”年上”で、迷っているオレの胸の雲を払ってくれたんだ
下げていた頭をあげ、その背中を見つめていると、
雲雀サンがふ、と立ち止まりこちらをむいて一言

「沢田、卒業おめでとう」


満開の桜が、彼の言葉と同時に揺れた







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