幸せ

ぽかぽかと暖かな陽射しが窓から入り込んできて丁度僕の膝辺りを照らす
陽射しで十分に暖まった僕の膝に彼女が頭を落してきたのは少し前
陽射しといってもそれ程強い訳ではなく、あたり続けても心地好さがおとずれるだけの春特有のもの
だから、膝にあるその頭に直接陽射しがあたっても暑くはないようだ
ただ、眩しさはあるようで、手で目を覆い隠している
僕は片手に本を持ち、もう片方の手で彼女の頭を撫でている

いつもと同じ

ただ違うのは、彼女が嬉しそうに微笑んでいるという事
楽しい夢でも見ているのか、ずっと、ずっと微笑んでいる
端から言わせれば不気味、とも取れるだろうが、こんな綺麗な表情、
彼女が起きていると見れた覚えが無い

こんな、完全に気を緩めた彼女を見れるのはきっと僕だけ


「…ん、何…?」

眩しそうに開かれる瞳
耳に届いたその声は疑問系だったように聞こえたから

「どうかしましたか?」

僕も疑問系で返してやる

「…何か、幸せそうな顔してたから珍しいなー…って」

ふわ、と小さく欠伸をする
そんな姿も一々美しい、なんて

”恋は盲目”

とはよくいったものだ


それにしても、
”幸せそうな顔”
自分で自分がおかしくてクスリと小さな息を漏らす

…きっと、幸せそうに眠るお前を見て、知らず知らずのうちに緩んでしまっていたのでしょうね


「幸せ、の定義はわかりませんが…幸せを自分で定義しても良いのなら僕は今、幸せなんでしょうね」

だから、そういう顔をしていたのでしょう
と付け加えて止めていた手を再び動かし、彼女の柔らかな髪の毛を指に絡める

「…幸せ?……そっか、…幸せ、か」

一瞬目を見開いて嬉しそうに目を細める彼女

「…夢の中のあんたも、”幸せ”がどうのーって言ってたよ」

体を横に向け、僕に抱きつくような体勢をとった彼女は、僕のお腹あたりに鼻をすりつけ

「んー、落ち着く」

と呟いている


幸せとはなんなのか
今、こうしているだけ…それだけ

それだけを”幸せ”と感じる僕


きっと、数年前の僕が見たら眉を顰め

”気は確かか”

と、問い掛けてくるのだろう

だから僕はこう返してやる


”ええ確かですよ、…君も早く出会えるといいですね…僕に幸せをくれる愛するべき女性に”






…ああ、幸せだ


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