ずっと、一緒だよ

「っ…馬鹿じゃないの?何で俺なんかを…っ、うわぁああああああ!!!!!!!」


目の前で倒れている千夏を抱き締めた

流れ出る血の生暖かさが気持ち悪い
いつもならすぐに俺の背中に回ってくる筈の腕が力なく落ちているのも気持ち悪い
どんどん冷たくなっていく千夏の体が、気持ち悪いっ…―











どうしてこうなった?
どうして、千夏が死ななければならなかった?
俺達はただ笑っていたかっただけなのに…




気付けば周りの人間は皆泣いていた
喪服を着て

そこで気付く、ああ、千夏の通夜の最中だったんだっけ

俺はどうにも現実味がもてなくてボーッと突っ立っている事しか出来なかった


「精市、大丈夫か?」
「…大丈夫に、…見えるかい?」
「…すまない」

柳が声をかけてくれた
…けど、今の俺にまともに対応するだけの元気というか気力というか…は無かった

嗚呼、こんな時こそ千夏に傍にいて欲しいのに…






「…あ」




そうか、そういう事か

傍に居て欲しい時に、
抱き締めたい時に、
笑顔を見たい時に、

…いないんだ

死ぬ、って…そういう事なんだ



「ねえどうして?!どうして幸村君が生きてるのに千夏はいないの!?」

千夏の母親が俺に掴みかかってきた
力の無い手で俺をバシバシ殴ってくる

「っ…申し訳、ありませんっ!!」

それしか、言えない

「やめなさい!幸村君だって千夏を大事に想っていてくれたんだ!!」
「っ、だってあなた!!」

お義母さんを止めるお義父さんの表情も悲しみに歪んでいた
一人娘を失ったんだ、その悲しみは計り知れないだろう

「申し訳、ありません!」




―「ねぇ精市、今日ねお母さんが精市の事を褒めてたんだよ」
「へえ…それは嬉しいね」

俺達は歩いていた
手を繋いで
歩道を

これから2人で映画を見るつもりだ
最近話題のラブコメディ
千夏の好きな女優が出ているとか何とかで

「また家に連れておいで、だってさ!」
「ふふ、うん、そうさせてもらうよ」

俺の両親はもうとっくに千夏の事を気に入っているから
そろそろ両親公認の仲になれそうだな、なんて
幸せ絶頂期だ
千夏、ずっと傍にいてよ……なんて、絶対に言ってやらないけどね

「精市赤ー」
「そんなに急がなくてももう青になるよ」

信号に止まった

―確か、ここまではいつも通りだったんだ―

「青になった!」
「ん、行こう」

手を繋ぎなおして俺達は横断歩道を歩き出した

「精市危ないっ!!」
「え…?」



ドンッ
キキーッ…ドッ…




「…え?」


俺は一瞬何が起きたか理解できなかった
俺の目の前では千夏が倒れていて、少し離れた場所にはフロントバーの凹んだトラック







「っ…馬鹿じゃないの!?」―











原因は運転手の居眠り運転
信号が赤にも関わらず直進し続けたトラックにいち早く気付いた千夏が俺を突き飛ばした

「っ、…千夏…」

ああ、如何して、どうして俺が彼女を突き飛ばす立場になれなかったのだろう
幸せに気が緩み過ぎていたんだ




「幸村君…」

「千夏……っ千夏…!!」

「幸村…」

「っ…うわぁあぁあああ!!!」

「幸村!!」


俺を宥めようとしている丸井、仁王、真田の言葉は耳に入らなかった
俺が、千夏を殺したんだ

俺が、あの日、あの時間に、あの道を通って行こう、なんていわなければ…
俺が、もっと気を張っていれば…!!

おれが、ころしたんだ



千夏…ゴメン、…ゴメン千夏………



「っ…ふふっ……」
「幸村…君…?」

大丈夫だ千夏
寂しい思いはさせないよ
一人には、させない

「…千夏、愛してるよ」

冷たい君の頬を撫でて俺は給湯室に向った

「…あった」

俺の手に握られたのは…

「っ!?幸村やめろ!!!」
「バイバイ」

銀色に光る、

ドッ…

ナイフ






ねぇ千夏、もうすぐ会えるよ
だから待っててね
俺の大好きなお前の笑顔でさ
俺を迎えてよ




…ずっと、……い、…っしょ、…だよ








[ 12/21 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -