真っ直ぐな光

目が覚めるとそこは一面白の世界だった
ピ ピ ピ と規則正しい機械音が聞こえる

ああ、私は生き残ってしまったのか

まだはっきりしない頭で、私は確かにそう思った

死にたかったわけでは無い筈だ
だって数日前まではあんなに楽しかったんだもん
お母さんとお父さんと…大好きなアノ人と
私は笑っていたんだもん

だけどそれは一瞬にして崩れ去った

少しずつ覚醒してきた頭に浮かぶのは惨劇

血、血、血
悲鳴、怒声、叫声

思い出すだけで狂いそうになるその光景は、逆に私の頭を冷静にさせた
私はここにいるべきではない
私はあそこで死ぬべきだった

それはまるで誰かに洗脳されたかのように私の頭を巡る

誰かが見舞いに来てくれたのだろうか
ベッドの脇の台に置いてあるフルーツ
そしてフルーツと一緒に置いてあるナイフ
それを私は手に取った



「千夏!!」
「っ」

ナイフは咄嗟に布団の中に隠した
洞察力の鋭い彼にバレない事を必死に祈って

「やっと起きたか千夏…」
「…隼人、…」

大声をあげて私の病室に入ってきたのは獄寺隼人
私の大好きな人

「…お前、3日間も寝たままだったんだぜ…っ」
「3日…」

良く見ると彼の目は赤く腫れ、くまが出来ていた
きっと、ずっと居てくれたんだ
ずっと、…傍に…

「…千夏…?」
「っ…」

もう、傍にいてくれる人なんていないと思った

だって私の所為なんだもん
私が隼人の弱点だって、バレてしまわなきゃ…

お父さんは、お母さんは、
死ぬことなんて無かったのに

ボンゴレに…隼人に…
迷惑をかけることも無かったのに


ごめんなさい

ごめんなさい

ごめんなさい


「千夏…助けらんなくて…本当にすまねぇ」
「…違う、隼人は悪くない…私が弱かったから…貴方の弱点になってしまったから…っ」

ごめんなさい
たくさん迷惑をかけて

ごめんなさい
気を使わせてしまって

ごめんなさい
死なせてしまって









「っおい!!!!」
「っ!!」

隼人によって掴み上げられた右手からナイフが落ちる
左手にはまだ小さな傷しかつけれていない

ああ、失敗した


「何…やってんだよ!!!」

バシッ

殴られた

頬がジンジンと痛み出す
今の瞬間に舌を噛めばよかったと小さく後悔をした

でも、どうして私よりも貴方の方が痛そうな顔をしているの…?


「…お前の親父さんとお袋さんは…両親のいない俺にとっても親父やお袋みたいな人だったんだよ…っお前と同じ位、俺も辛い…なのに、…なのに!!…お前までいなくなろうとすんなよ、たのむから…千夏…っ」

まるで縋る様に
隼人は私を抱き締めた

壊れ物を包むように
私という存在を守るかのように

「だって…、私の所為なんだよ?私は隼人に、迷惑しかかけられない!」

泣かないで隼人
そんな顔が見たいわけじゃないの
お願いだから、私に光を見せないで…感じさせないで

貴方と進みたくなってしまう
私にはそんな資格ないのに

「そんなのっ…当たり前だろうが!!女は、男より力が弱いんだから男に迷惑かけてなんぼだろうがよ…男は女を守るのが当たり前なんだよ!!」

すっかり鼻声になってしまったその言葉は支離滅裂で
そんな理屈初めて聞いたよ
私的には、守ってもらうだけじゃなくて守りあう、の方が良いんだけどな

「私は…隼人が大好き」
「オレも、だ」
「これからも…私と居てくれるの?」
「当然だ!!」


貴方は光
とても真っ直ぐな光
1つの事しか照らす事の出来ないその光で
どうか私を照らしてください

私が闇に捕われてしまわないように
私が迷っても再び貴方の元へ辿り着けるように

どうか、その暖かい光で、私を


「隼人、愛してる」
「オレもだ」

お父さん、お母さん
私はもう少し生きてみようと思います

彼と一緒に、生きてみようと、思います

[ 7/21 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -