耳掃除と小さな誓い

「雅治の髪は意外と柔らかいよねー」
「ちょ、くすぐったいナリ」

膝の上にある彼の頭を撫でる
見た目と違って存外に柔らかい髪の毛をくしゃりとしてやれば彼はその身を捩った

「動かないで、刺しちゃうよー」
「やめれ」




とある日曜日の午後
ぽかぽかと暖かい陽射しが私達を包む
そんな心地のいい日

遊びに来た雅治と私以外誰も居ないリビングで私は雅治の耳掃除をしてあげていた

”耳の聞こえが悪い”

なんて突然言い出した時はああはいそうですか、って流そうかと思った(っていうか一回流した)
だけどどうもソレは遠まわしに私に耳掃除をしてほしい、と言っていたみたいで
雅治はソファにゆったりと座っていた私の膝に頭をおとしてきた
なんとなく、あ、恋人っぽいなー、なんて的外れな事を思いながら何時の間に取ってきたのかわからない耳掻き棒を受けとった

で、冒頭に戻るわけだけど

「雅治ー、全然綺麗だよー」

グイー、と雅治の耳を引っ張って奥を見やすいようにしてみても
産毛が見えるだけでゴミは見当たらない

なんだよ、聞こえが悪いなんて言うからドンだけ詰まってんのかちょっと楽しみだったのに

「当然じゃ、今朝自分でやった」
「刺すー」
「やめれ」

なんなんだお前コラ
じゃあなんのために私に掃除させてんの
耳ごと掃除してやろうかこのやろう

「千夏にやって欲しかったんやもん、自分で掃除してて虚しくなった」

ギュ、と私のお腹に顔を押し付けてくる雅治
ぐえ、ちょっと苦しいぞ、だがまあ可愛いから許す
付き合って初めて気付いたけど、雅治って意外と甘えたで寂しがりや
普段の彼からは想像がつきにくいソレはテニス部のレギュラーと私だけが知っている
そういう面が見れるのも、彼女の特権というやつですよ


「はいはい、わかったわかった、もちっとやってあげるから離れてね、これじゃ出来ないよ」

そう、優しく頭を撫でてやると雅治はゆっくりと元の体勢に戻ってくれた
なんか弟みたい、だなんて言ったらきっと拗ねるんだろうな…
それはそれで可愛いだろうけど

そんな事を考えながら耳掃除を再開すると雅治は気持ち良さそうに目を細めた
まあ確かに耳掃除って気持ち良いよね、わかる


…それにしても

「雅治の耳って形いいよね」
「そーか?」
「うん」

耳なんて今までよく見た事なかったけどこうやって改めて見るとそう思う
大きくも小さくもなく、白くて形も整っていて…

あー、なんか…

「ピアスあけてい?」

そんな衝動に駆られる

私の耳にはいくつか穴が開いている
雅治はそのピアス達を見て綺麗だ、似合っているとは言ってくれるけど
彼自身ピアスを開けようとはしなかった

「真田に怒られるから嫌じゃ」

理由は真田君らしい
確かにあのお堅い風紀委員はピアスなんて見付けたらきっと、引き千切る勢いで怒鳴りつけてきそうだ

「えー、でもお揃いで開けたいよー」
「………いやいや、ナにで?何でボールペン握ってんの?」
「え?そこにあったから?」
「そんなんで穴は開きません」
「あはは大丈夫大丈夫」
「あははでも大丈夫でもなか!!」

そう叫ぶと雅治は私の膝から退けてしまった
全く、とかいいながら頭をガシガシとしている
あ、その仕草格好良い

そもそも本気でボールペンなんかで穴を開けるつもりなんて更々無かった私は持っていたペンを直ぐにその辺に放る
彼は耳掻き棒の上についているフワフワしたので仕上げをしていた
それをみてあ、満足したのかな、なんて彼のこれ以上私に無防備に耳を晒したくないという胸中をわかっていながら思った

「…ったく、ピアスは開けんて言ってるじゃろ」
「でもお揃いにしたいよ」

そう言うと彼はふむ、と顎に手を添えて軽く考えた後にずい、と私に体を寄せてきた

「え、ちょ、何」

顔を近付けてくる彼から逃れようと後ずさるけど、
生憎ソファの上ではソレもたかがしれている
すぐに逃げ場を失った私は彼の手で顎を固定され動けなくなってしまう

「高校出たらお揃いにしちゃる、だからそれまで我慢してくれんかの」

そう、耳元でっていうか、耳に口を当てながら言われてしまえば
私は恥かしすぎて頷くしかない
私のいくつか開いているピアスに一つ一つ丁寧に口付けをしていく彼にされるがままの私
あぁあ、顔から火が出そうだ

完全なる形勢逆転だ

「千夏の耳はちっちゃくて可愛いナリ」

そんな事を言われた時は本当に火が出るかと思った


おかしいな、耳掃除をしている時の可愛い雅治は何処に言ったんだろう

ぽかぽかと暖かい陽射しが私達を包む
そんな心地のいい日

ソレは改めて雅治の二面性を見た、
もう耳掃除なんてしてあげないと誓った、

そんな日だった




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仁王誕生日企画に提出させていただきましたっ!

お題は”耳掃除をする(される)”だったんだが…
誕生日って感じが一切しないアレになったね゜∀゜

本当はこれ以外に誕生日っぽいのも書こうとしたんだけど
如何せん一昨日までテスト=時間が無かった^q^


まぁ、これかいてて楽しかったから。私が。

仁王誕生日おめでとうっ!心からお祝い申し上げますっ愛してるっw

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