複雑な心境

ガラッ

「お、帰ってきたな」
「ん、ただいま」

出て行った時と同じ様に、10代目の部屋の窓から家に入る
部屋にはリボーンだけが居て、10代目やチビ達はいなかった
これはある意味好都合だ、と思った私は他の人が来ない事と確かめてからリボーンに話を切り出す

「リボーン、ファミリーの構成と、その人間について教えて」

別に10代目が居ても構わないけど、きっと彼がいたら話が進まないだろうからね

履いていた靴をカバンに入れて、ベッドの前に腰を下ろす
銃の手入れをしていたリボーンが私の言葉に口元を吊り上げた(…ように見えた)

「面白い人材が集まっているようね」
「まーな、…まずお前も知ってるだろうが獄寺隼人だ、次に山本武、そんで候補が笹川了平に雲雀恭弥」

どこから出したのか、明らかに盗撮であろう写真を渡される
4枚の写真には4人、それぞれの人間が写っている

「ふぅん…今の所は少数精鋭って?」
「まーな」

数は4人と少ないけど、言うなれば”量より質”だ
下手に多くの人間をただ勧誘して、崇拝心・忠誠心が薄い人間がファミリーに入っても困る
10代目を大切に思っていて、それなりに腕が立つ
そんな人材を少しずつでも集めていくのが賢明だと思う

「隼人は知ってるけど…他は強いの?」
「それは自分で確かめろ」
「…喧嘩売っていいって事?」
「血の気の多い奴等だからな…簡単に買ってくると思うぞ」
「楽しみ」

リボーンの言葉に口角を上げる
私がお護りする彼はどれ程人望があるのか
それは集まった人間を見れば大体わかる
…だから楽しみ



「リボーン、母さんがコーヒー淹れ…あ、」

会話が終わった、丁度その瞬間
肩にタオルをかけた、恐らくお風呂あがりなのであろう10代目が部屋に入ってきた
本当にタイミングの良い方だ

「ただいま戻りました、10代目」
「あ、お、…おかえり…クラリタさん」
「クラリタ、で良いですよ」
「…く、…クラリタ……?」
「はい」

戸惑いがちに私の呼び方を変える10代目に軽く微笑みかけると、彼もつられたようにヘラ、と笑った
多分、さっきよりは落ち着いて、私を受け入れてくれたのだと思う

「あ、そうだ母さんがご飯用意してるから」
「…あぁ、わかりました」

口ぶりからするに、他の人はもう夕飯を済ませたようだ
どうやら私は思ったよりも長く出ていたらしい
10代目に礼を1つしてから私は部屋を出て奈々さんのもとへと向った
ああ、良い匂いだ









クラリタさ…クラリタが部屋を出て行った所でオレは扉をしっかり閉め、リボーンに向き合った

「なあリボーン」
「なんだ」
「…オレって本当にまた命を狙われてるのか?」

正直、実感が沸かなかった
骸の時は周りの人達が襲われてしかっていたから、嫌と言う程に実感せざるを得なかったけど
だけど今回はオレの周りはまだ何も変わっていない
これから変わるにしても、ソレを口で伝えられれただけじゃ実感できなかった

「クラリタの奴を信じてねーのか」
「いや、…そうじゃないけど…実感できなくて」

正直に言うとリボーンは溜息をついた

「…骸戦で少しは実感したと思ったんだがな」
「え?」
「いいかツナ、…お前はお前が拒もうとボンゴレの10代目になる男なんだ…その意味を少しは考えやがれ」

リボーンの口ぶり、その表情は珍しくも至って真剣だった
リボーンはいつもふざけてばっかだけど、こういう時はどんなに拒んでもオレが知りたくもない本当の、真実を突きつけてくる
オレはそれを知っている

…ああ、本当なんだ

認めたくないし、知りたくもなかったけど、そうなんだ
クラリタを信用していないわけではない
だけどやっぱり、リボーンとクラリタに言われたのでは違う

命を、狙われている

「…クラリタは…何で来たの?」
「言ってただろ、お前を護るために、だ」
「そうじゃなくて!…なんであんなオレと大して年も変わらない女の子、なのかって事だよ!」
「あいつは本部でバラーレの対処を任されていたんだ…そして将来お前がボスになった時にその秘書になる事も決まっていた…それが早まっただけだ」

命を狙われている、…それはまあわかったけど
でもどうしてクラリタなんだろう
相手は人殺しなのに、大人なのに、…プロなのに

「あいつはお前が心配するのなんか烏滸がましい位強ぇんだ、安心しやがれ」
「っ、…ハイパーモードよりもって事?」
「比べるのもバカバカしいな」
「んなっ!?そこまで言うか!?」
「あいつは強ぇ」

リボーンの読心術にはもう慣れたから一々驚かない
…でもちょっとだけ驚いた
あのリボーンがここまで推すなんて
クラリタは、そんなに強いんだ

「ま、オレには劣るがな」

…もう一々驚かない

「ダメツナのくせに生意気だな」

………

「なんとか言ってみやがれ」
「っあーもう!人の心勝手に読むなよ!!」

リボーンがこれだけ言うなら大丈夫だとは思う
クラリタはきっとめちゃくちゃ強いんだと思う

…けど、
けどやっぱり

オレと同い年位の、しかも女の子に命を護ってもらう、なんて気が進まないのは確かだった

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