スモーキンボムと

「…はあ」

思わず溜息がこぼれた
いや、これはしょうがないよ

「10代目に手出しはさせねぇ!!」
ドカンっ!!

ダイナマイトの粉塵から避けるために数歩その場からさがる
正直な話、思わず溜息、所ではない
頭を抱えたくなるレベルだ

だって、だってこれじゃぁ

「10代目が近くにいるって教えてるようなものだよ…」

ああ、頭が痛い


バラーレは10代目候補沢田綱吉を狙い、動き始めたはいいが
その正確な居場所まではまだ掴めていない様だった
きっと、広範囲い探索部隊を展開して、情報収集をしながらの捜索
そんな方法を取っていた筈だ
実際、私が10代目の家に着くまでにもそれらしき人間を多く見た

それなら、そいつらに細心の注意をはらっていれば暫くは見付からないし、
逆追跡もしやすいだろう、…と、踏んでいたのだが

スモーキンボムこのやろう

まぁ、アレも10代目の事を思ってやっている事だし、
猪突猛進で直進しか出来ないのは昔から変わらない事だし
…だけどやっぱり

スモーキンボムこのやろう




……――……

不意に音がやんだ
戦闘が終わったからなのだろう

彼の勢いや先程まで煩い程になっていた音などで結果は見なくてもわかる
勿論、スモーキンボム獄寺隼人の勝ちだ

爆煙が徐々に晴れていき、
煙草に火を点けドッカリ座る彼の背中が見え始めた

「…ったく…」

小さく文句を吐いて煙を吐き出す彼を見て
先程までの苛立ちが消えていくのがわかった
所か、寧ろ頬が綻んでくる

強く、なったね





「相変わらずだね、その直進的な所も、1つの事しか見えない所も」

…なんて、満足気に綻ぶ胸中とは全く別の言葉が口をついて出た
ツンデレじゃないのよ
苛立ちは消えたにしても、嫌味の一つ位は言いたかっただけよ

「っ…!?」

私の声に肩を震わせ、ダイナマイトを構えて振り返る彼
新手かとでも思ったのかしら?
だけれどその瞳は瞬時に見開かれ、持っていたダイナマイト所か咥えていた煙草までもがその場に落ちていった

その反応が彼らしくて嬉しくなった私はきっとかなり笑顔で

「久しぶり、隼人」

この台詞を言ったと思う



私と隼人はボンゴレ本部で出会った
9代目に拾われてきた隼人を、年が近いという理由で私が面倒に見ることになったのだ
お互いに愛想の良い方ではなかったから、仲良くなるにはかなりの時間を要したけど
最終的には、互いが本部にいる時は常に行動を共にするほどの仲にはなっていた



「おま…なんでこっちに…!!」

未だ驚いている隼人が可笑しくて、少し吹き出すと漸く彼は我に返ったらしく
小さく咳払いをしながら落した煙草の火をつま先で消していた

「…で、なんでだよ、聞いてねぇぜ」
「だって言って無い…10代目を護りに来たのよ、そいつらが動き出したから」
「バラーレか」
「うん」

隼人は大方の事情を知っている

私がこのファミリーを追っていることも
このファミリーが最近急に成長しだしたことも

新しい煙草に火を点けながら座りなおした彼に習って、私も隣に腰をおろす
沈みかけの夕日に照らされてほんのり赤い彼の横顔を見ながらふと考えた


はたして、どれだけの猶予が与えられるのだろうか
これだけ派手に暴れてしまったのだからバラーレの本部に報告が行くのも時間の問題
…いや、もしかすればもう報告がいっているかもしれない
そうしたらバラーレは本隊をこの並盛に終結させるだろう
残念ながら10代目の顔は既にバレてしまっているため、見付かるまでにそう時間はかからないだろう

「…んだよ、俺の顔に返り血でもついてっか?」
「別に、ただ隼人の所為で時間が無くなったなーって」
「はあ?」

時間が無くなった以上、私もただ護っているだけではいけなくなった
早い所対処をしなければいけない
まあ、遅かれ早かれ、しなければいけなかった事だ
やるべき事は決まっているし、わかっている
明日からでも早速行動に移そう
…まあ、こんなに早く展開が動くなんて思ってなかった分、心の準備は全然出来てないないけど


「なあ…」

煙草を吸い終わったのか、近くに倒れていた男の頬にグリグリと吸殻を押し付けている隼人が、不意に話し掛けてきた
別に良いけど、超熱そうだよ、ソレ

「何?」

最終的にその男を思い切り蹴飛ばす隼人に苦笑を漏らしながら返事を待つ
私も大概酷い事をしてきた人間だから何もいえないけど、ちょっと同情するよ、その男に

「いくらお前でも、最近力をつけてきたファミリー1つを1人で潰せるのか?」

目を合わす所か、顔すらこっちに向かない隼人はきっと本気で心配してくれている
照れ臭い事を言うときは絶対に目を合わせてくれないんだ

「心配しないで、ちゃんと増援もくるから」

そんな相変わらず素直じゃない隼人にやっぱり笑いながら告げると、
こいつ何笑ってんだ、とでも言いたいような顔をされた

「…そーか」

そう、一言だけ言った隼人は私に背を向けて歩き出した

「あれ、帰るの?」
「ああ、無駄に時間喰っちまったしな…お前がいるなら10代目をお傍で御守りする必要もねぇ…っつーわけで帰る」

片手をゆらゆらとあげ、もう片方の手はポケットに突っ込み
猫背でガツガツと歩いていくその背中を見送る

私も帰ろう
さて、これから忙しくなりそうだ

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