とりあえず痛いです

キーンコーン

漸く授業が終わった
私はある目標を達成する為に急いで授業道具を片つけた
これで準備は万端
絶対に達成してみせる、捕まったりしない









「真咲さんって仁王や丸井達と知り合いだったの!?」

昼休み、屋上から戻ってきた時の事だった
教室に戻ってきた私は、席につこうとした瞬間、女の子達に囲まれた
え、何可愛い

「えっと…うん、少しね…」

グイーと、手を引かれながらそう答えると彼女達はとても苦い顔をした…な、なんで?
手に持っていたお弁当が何時の間にか私の席に丁寧に置かれているのを見るあたり、この子達は良い子なんだと思うけど

「なー、風花になんの話だ?」

頭上にクエスチョンマークを飛ばしまくってる私と、私を囲む女の子数人
そこにヒョコ、と顔を覗かせてきたのは丸井君だった
良い子なのはわかるんだけど、名前も知らない子達に囲まれて正直ビクビクしていた私には、丸井君の登場は嬉しいものだった
…けど、

「ちょ、丸井はくんな!」
「関係無い奴はひっこんでろ」

…丸井君は強制退場をさせられた

「…俺、うちのクラスの女子怖い」

なんて、泣きそうになってる丸井君を仁王君が微妙な顔で慰める、という何ともシュールな光景を視界の端に捉えながら私は、視線を女の子達に戻した

「真咲さん、率直に聞くね?」
「はあ…」

率直に聞く前に自己紹介をしてくれないかなぁ、なんて思ったのは口には出さないでおく

「もう入る部活は決めた?」

私に問い掛けてきた彼女の言葉で周りの子達の視線も一層真剣味を帯びた気がする
……てかえ、部活…?
…部活って…、それでこんなに真剣なの?私囲まれてるの?

……まぁ、

「一応は、決まってます」
「どこ!?」
「えっ…?」

決まっている、と言った瞬間、女の子達が凄い勢いで反応を示してきた
え、怖い…可愛いのに怖いよ

「え、と……女テニのマネージャーをやろうかな、って…」

完全に女の子達の勢いに圧倒された私は縮こまりながらそう伝える

「「「………」」」

…けど、反応がない

あれ、私何かまずい事でも…もしかしてこの学校には女テニが無い、とか?
…いやいや、学校のパンフレット貰った時見たもん、あったよ女テニ、絶対!

「あの…」

私何かしましたか?
そう伝えようとした時、タイミングが良いのか悪いのか、授業開始のチャイムが鳴った
私の肩に置かれていた手が無言で離れ、女の子達は無言で席に戻っていった

…え、本当に怖いんだけど

とりあえず私も席につくと、丸井君がまだ拗ねてて思わず笑った




「さっきはゴメンね!私は坂口春奈」
「え、あ…はぁ」

授業が終わり、再び休み時間
私はさっきと同じ様に女の子達に囲まれていた
だけど、その雰囲気はさっきとは打って変わって穏やかそのもの
普通に自己紹介された時はちょっとびっくりした…しょうがないと思う

「真咲さんは女テニに入るんだよね?」
「うん…そのつもり」
「なら大丈夫かな」

ニッコリと笑って良かった、なんて胸を撫で下ろした風の坂口さん他
ちょっと待って、私が凄い置いてけぼり

「あの…どういう意味?」
「…あ、あのね?」

私が尋ねると、坂口さんは少しも嫌な顔をせずに教えてくれたから、やっぱりこの子…この子達は良い子なんだと思う

…なんでも、
立海にはアイドルがいるらしい
今は大分落ち着いたらしいけど、中学の時はファンクラブまであったとか
んで、そのアイドルってのが私が今日昼食を共にしたテニス部の彼等で
高校になって落ち着いたとはいえ、まだまだ熱狂的なファンがいる彼等と仲良くし、もし更に男テニのマネージャーにでもなろうものなら……

…という話らしい

ソレを心配してくれた坂口さん達は私に忠告?をしてくれようとしたらしい
うん、やっぱり良い子だ
因みに、

「私達のこのクラスにはそんな子はいないから安心していいわ」

だそうだ
…まぁ、さっきの丸井君の扱いをみればそうだとうね

…っていうか、テニス部怖い
何アノ子達
確かに皆イケメンだなぁとは思ったけど、ファンクラブがあるって何事、普通じゃない

「…で、私からもう1つ……絶対真咲さんマネージャーに誘われるわよ」

なん、だと…

「昼休みの終わりね、私幸村君達とすれ違ったの…その時柳君がそう言ってた」
「…えー」
「だから真咲さんは授業とSHRが終わったら急いで入部届を貰って女テニに行った方が良い…届けを出しちゃえばこっちのもんだから!」

…どうやら坂口さんは本気で私を心配してくれてるらしい
こんな風に力説してくれるなんて……

一体彼等のファンクラブの方々は今まで何をしてきたのだろうか

まぁ、私も最初から女テニのマネをするつもりだったし、こんな話を聞いてしまっては男テニのマネは面倒臭そうとしか思えないしね
大人しく言う事を聞くことにしよう

「ん、わかった」
「頑張ってね真咲さん!」
「テニス部なんて顔が良いだけの奴等のために変な心配する必要なんて無いよ!」
「私達は真咲さんの味方だから!」

…なんか、凄い応援された
別に私はいいけど、多分…今の聞こえてるよ?
そのテニス部の2人に









「よし、連絡は以上だ」

先生の連絡が終わり、さようなら、と挨拶も交わされ、よし行こう
私は早足で教室を出た
後ろで丸井君が何かを言ってたけどゴメンね、今は待てないの
教室を出る寸前に坂口さんと目があった
力強く頷かれた…よし、行こう


「どこに、行くの?」



………………、…?


「……え?」

ガシ、と掴まれた腕
聞き覚えのある声に冷や汗を流しながら振り返ると、其処に居たのはやっぱり幸村君で
彼は素晴らしい笑顔を私に向けていた

ふ、と坂口さんの方を見ると、引きつったその顔を逸らされた

…え?
……幸村君、…君、そういう立ち位置?






(悪魔の微笑とはまさにこの事で) (…あ、違う魔王だ) (…とりあえず腕が痛いです。)

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