事実と衝撃

”後で話すね”
そう、苦笑気味に言われたため、俺は大人しく昼休みまで待つ事にした
ブンが暫く「お前等どういう関係なんだよぃ?」と五月蝿かったが、ガン無視を決め込んだ
俺だって良く分かってないんだから仕方が無い
休み時間のたびにクラスの女共に囲まれている真咲風花、お姉さんを横目に見ながら俺は色々整理をしていた


真咲風花
昔、俺の家の近所に住んでいて、よく一人遊びをする俺を見付けては一緒にいてくれた人
テニスをしている彼女はいつも楽しそうで、そんな彼女を見て俺もテニスを始めたのだ
お互いの家にも何度か行き来した覚えがある
いつも笑っていて、前向きで、一つ年上のお姉さん
それが、真咲風花だ


「仁王ー、俺も話参加させろよぃ?」
「ん?」

ふと気が付けば4時限目は終わっていてクラス中が昼飯を食べる為に慌しく動き出していた
ブンも、俺とお姉さんと食べるつもりなのか、ガタガタと机を寄せてきていた

「あの…まさ……仁王君…人目のつかない場所とか、…ないかな?」

ブンに無理矢理机を移動させられているお姉さんは周りの視線を気にするかのようにしながらそう言ってきた
まぁ、確かにそうした方が色々いいかの、
じゃあ裏庭にでも、そう返事をしようとした瞬間

「あ、本当だ。真咲風花だ」
「だから言っただろう、精市」

クラス中に黄色い声があがった

「あ、幸村君達」

ブンが言った通りC組の入り口付近には、幸村に真田、柳が立っていた

「……仁王君、誰アレ?」
「あはは、誰アレ、とかふざけてんの?ほら、さっさと行きますよ」
「え、ちょ!?」

……唐突過ぎやしないかの、幸村
3人でC組に現れたかと思えば、幸村だけがズンズンと俺達に近付いて来て、お姉さんの手を掴んで無理矢理連れ去っていった
…何事じゃ
幸村達もお姉さんと知り合いだったんか?

「おい、仁王行かねーの?」
「…行く」

まあとりあえず、行ってみないとわからんの
お姉さんの机の上にあった弁当を手に持って俺達も4人の後を追った
歩いてる途中騒ぎを聞きつけたのか、ジャッカルに柳生、そして赤也が合流し、気付けばいつものメンバーが揃っていた
2人で色々聞きたかった俺としてはもう溜息をつくしかない状況だ

「面倒なことになったの…」

一人呟いた声は誰に届く事もなく、虚しくも喧騒にかき消された




「さて、色々聞かせてもらいますよ?」

他生徒の注目をたっぷり浴びながら俺達、っつーか幸村が向かったのは屋上
俺達全員が入ると奴は鍵を閉めた
ここは全校生徒が自由に使える場所だというのに、何と言う自由加減

「…え、…仁王君、丸井君…」

幸村と真田に両サイド塞がれ、座らされたお姉さんは困惑顔で俺達に助けを求めてきた
まぁ、助けちゃる事は出来んがの

「悪いの、幸村には敵わんきに」
「悪ぃ…」

それはブンも同じだったようで、苦笑いをしながら謝罪の言葉を述べていた

さて、俺等の大将とお姉さんはどういう関係なんかのう?
俺は完全なる傍観者の体制をとらせてもらうことにした

「まず一番大事な事聞いてもいいかい?」

疑問系のくせに反論を許さない、といった威圧感を醸し出しながら幸村は言った
お姉さんはどんな反応をするかとそちらに視線を移せば、

「良い…けど…」

一瞬難しそうな顔をしてそう言った
そしていきなり立ち上がり、俺とブンの間に座りなおして

「どうぞ!!」

そう言った
そんなお姉さんの行動に幸村は只管笑顔だった

「ふふ…相変わらずムカツク奴だなぁ…まぁいいや、あんた、俺達の一つ上じゃなかったっけ?」

ビクッ…
少し触れている肩に伝わる震動、つまり今のは聞かれたくない事だった、ってことかの

「他にもある、あんた今まで何処にいたんだよ」

俯いてしまったお姉さんに構わず幸村は続けた
こっわいのう
まぁでも、正直ソレは俺も知りたいから黙っておく

さ、教えて、お姉さん

そう、若干の期待を持ちながらお姉さんの答えを待つ俺
だが、

「あ、もしかして幸村君?」

次のお姉さんの言葉は俺の期待にそうことは無かった

は?
声には出さなかったが、いかにもそういう様な感じの表情で固まる幸村
隣で吹き出したブンが睨まれていた…今日の練習が怖いの、ご愁傷様、ブン

「…え、今更なの?」
「ずーっと何処かで見た事あるなぁ、って思ってたんだけどなかなか出てこなくって…幸村君だよね?」
「………幸村だよ…人に名前を忘れられたのは初めてですよ馬鹿女」

最後の部分をやけに強く言った幸村をさして気にせずにお姉さんは一人満足顔だった

「君は一緒にいた真田君だ!」
「うむ」

どうやらお姉さんは真田とも顔見知りだったらしい

「因みに、俺のことは覚えているか?…いや、思い出せるか?」

そこで今まで黙っていた参謀が口を開いた
どうやら参謀も顔見知り…どんだけじゃ

「んー…あっ、君は覚えてるよ!博士君!!」
「柳だ。そして教授だ」

ちょい吹き出した








「言いたくはないんだけどね、小学の頃真田と市のテニス大会に参加してさ、まあもちろん優勝したんだけど…大会が終わった後に現れたんだ、こいつが。…で、優勝した俺に試合しろって言ってきて、うけちゃったんだよね、俺」

ムカツク事を思い出しているかのように…っつーか、実際そうなんじゃろうけど
幸村は若干剥れながら話した

「結局まぁ…」
「私の勝ち!」

ニッ、と得意気に言ったお姉さんに俺達は肝を冷やした
いやいや、事実だとしても幸村の目ぇ見て?お姉さん
真っ黒いナにかが蠢いてるよ!?

「…俺は、東京で行われたテニスの大会で会ったな、真咲は普通に出場していたし、俺は勝ったぞ」

参謀ォオオ!?
何煽ってんじゃ!?
幸村めっちゃ黒い笑顔じゃよ!?
今日の部活で被害受けんの俺達なんじゃけど!

「ダブルスだったから負けたのよ!」
「そうだな、確かにお前のパートナーは正直なかった」
「本来のパートナー熱出したのよね、確か」

俺の心の訴えも届かず、二人は呑気に昔話に花を咲かせていた
いい加減溜息もつきすぎな気がする、俺

「っていうかよ、風花テニスやってんの?しかも結構強い?」

ビクッ
あ、お姉さんの肩がまた震えた
どんな表情してんのかな、ふとそう興味を持った俺は直ぐに隣の彼女を見た
彼女は、下手糞な作り笑顔を浮かべていた

「テニスはもう、やってないよ」

彼女のテニスを知っている(らしい)俺と三強が、全員揃って間抜けな顔を、した





(それはあまりにも)
(衝撃的過ぎる事実で)


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