小南×多由也
とある冬の日。
相当気温が低いのか、雨の代わりに雪が降るなか、小南が多由也に湯気の立ち上る飲み物を手渡していた。
「蜂蜜と生姜が入っている…温まるから飲みなさい」
「…う」
大人しく飲んだ多由也は、嫌そうな顔をして不味いと言った。
「…生姜は嫌いだった?」
「…食ったこと、ない」
「そう…ごめんなさい」
そう言って飲み物を仕舞う小南に、多由也は悪い…と呟いた。
「でも、すごく寒くなったら飲んでほしい。貴女に風邪なんて引いてほしくないの」
「…ウチは問題ない…これがあるからな」
多由也は自分の首に巻かれたマフラーに顔をうずめた。先ほど誕生日祝いとして小南がくれたものだ。かなり長いが、手編みならではの温もりが伝わってきて嬉しかった。…先ほどといえば。
「そういえば、飴を買っていたな」
小南も思い出したらしく、多由也と同時にポケットの中身を探る。二人の手の上に、任務先でなんとなく購入した飴玉が一つずつ。
「口直しにはちょうどいいでしょう?」
包み紙を剥がしながら微笑む小南。なるほど、こいつが飴を思い出した理由はそれか。
小南は苺飴、多由也はミルクキャンディを口に放り込む。
「そういえば、多由也は何故ミルクキャンディにしたんだ?」
「げほっ…」
予想外の質問に一瞬飴玉を喉に詰まらせかけたがすぐに落ち着き、目をそらしつつ、多由也はぽそぽそと喋り始めた。
「…小南のイメージカラーは紫だとよく聞く」
「…?」
「…でもウチは…その、髪飾りのせいか」
白だと思ったから。最後の方はもはや聞こえる音量ではなかったが、俯いた赤い顔が全てを物語っていた。
小南はくすりと笑って口を開いた。
「私が苺味を選んだ理由は…」
多由也が顔をあげる。と、同時に苺ミルクのやさしい甘さが口一杯に広がった。
「…多由也の髪と、同じ色をしていたからだ」
呆然としている間に小南は屈んで多由也のマフラーをほどきにかかっていて、多由也は自身の口内に二つの飴玉があることに固まっていた。
小南はマフラーを彼女の首にかけ、自分の首にも同じように巻いた。かなり長いため二人の身長差も関係無しに、平等に温もりを与えてくれる。
「私も寒い…飴をあげる代わりに入れてもらう」
フッと笑う小南に、多由也はようやく自分が嵌められていたことに気が付いた。
「てめー…さっきの飲みもんはどうしたこのクソアマ」
「生姜はあまり好きじゃなくてな」