復路の先は通行止め | ナノ


復路の先は通行止め



音の四人衆と言うのは、所謂“屍の積み上げ”で出来たフォーマンセルだった。耳心地は悪いかもしれない。けれど、これでも大勢から選び抜かれた、選りすぐりのエリートなんだ。

直々に大蛇丸様の傍らに仕える事を許され、直に口を聞く事の出来る数少ない音の忍。要約すれば、側近の護衛役って訳。おまけに呪印まで頂いちまって、そりゃあ更に位置付けの低い忍から恨みを買うのは、日常茶飯事に起こりうる。何事も慣れなんだな。

自分でこう言うのも何だが、俺達は年齢に見合わず、苦労をしている…と思う。
少なくとも他里に潜入する時には、俺はそう思う。音隠れがまだ若く、マイナーで、小さな隠れ里だからだろうか。それも一つの要因かもしれない。けれど、何より大きいのは、人々の士気の高さの違いだ。特に木ノ葉や砂に任務で赴く度、ひしひしを身を以って感じる。

俺達の里には、あのように楽しそうに笑う民衆など存在するのだろうか…と。俺達も含めて。



「左近。」

はっと顔を上げる。…一気に現実に引き戻された視界には、“屍を踏み台にした仲間”の面子が揃っていて。

ああ、そうだった。今は大事なミーティング中だったな。俺とした事が、考え事に耽ってしまうなんて…らしくねェ。

「ちゃんと聞いとけ、ボケナス。出発は明日なんだぞ。」

「…多由也…女がそんな口を…。」

「うるせーデブ!ウチに馴れ馴れしく話し掛けんじゃねェ!」

眼前の何時もの遣り取り。別に、何ら真新しい事象が見付かる訳でも無い。 只、こいつの…多由也の強気な表情に見え隠れする裏側の素顔が、ほんの一瞬、“あの時”と重なって見えたから。

“あの時”―とは、一言で言うと、俺達が出来た日だ。もっと深く言うと、闘技場での殺し合いを経て形成された、音の四人衆誕生の日。もう、幾年か前の話になるんだな。

戦争で帰る場所を失くした俺達兄弟を拾ってくれた大蛇丸様。気に入られたいが為に、必死こいて修行を積んだんだよな…。同じような境遇の子供は沢山居た。

一体何処から拾ってきたのだろう。俺達のように一人ずつスカウトしてきたのだろうか。

幼心ながらに分かってはいた。何れ、“位置付け”を巡って争い合う間柄になると言う未来も、予測は出来ていた。…それでも、日々を共にした仲間を惨殺するのは、子供にとって…いや、大人にとっても酷な事だろう。

闘技場に通された時、そこには各々の未来が想定されたストーリーや運命が、既に出来上がっていたのかもしれない。





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