ニオイスミレ(2) | ナノ


ニオイスミレ

said:デイダラ

「…何でオイラが草漁りなんかしなきゃなんねーんだ、うん」

暁とかいう組織に入り、オイラと同じく物造りであるサソリの旦那と、二人一組を組んで数ヵ月。今は名を上げる時期じゃないとかで、派手な行動は禁止だと命令された。これじゃあ、創作活動すら自由にできねーじゃねーか!うん!
ぶちり、とその辺にあった草を引きちぎる。こりゃ毒でも薬でもなさそうだ…たぶんだけどな、うん。
この任務を始めて、二ヶ月くらいだろうか。なんかもう旅でもしてる気分だ。相手は三十路のおっさん…。

「…ウェ」

気持ち悪ィこと考えちまった。まあとにかく、オイラがこんなことしてる理由だ、うん。

立ち寄った宿の部屋で一人で休んでる時、旦那が訪ねてきたのが事の発端だった。
あのおっさん、毒のストックが欲しいから毒草を採ってこい、とか言いやがったんだ!せめて物を頼む態度ってもんがあんだろ、うん!
しかも、オイラが種類あんまり知らねーっつったら鼻で笑いやがった!!こうなりゃ目一杯採って、あのスカした鼻明かしてやる!うん!!

「…オイラ、嵌められたんじゃねーだろうな」

サソリの旦那ならやりそうだ。だがこのまま帰るのもプライドが許さねー…うん。でも毒草なんざ、トリカブトとかしかわかんねーぞ。…忍者としてこれでいいのか、オイラ。
どうしようか迷っていると、気配を感じたため動きを止める。どうやら気配を消してるつもりらしいが、この程度で気付けないオイラじゃない。…これなら此方に気付くこともなさそうだな、うん。ちょっと行ってみるか…。

…居た!髪長いし、女か…?どうやら花を摘んでるみてーだ、うん。

「ん…?」

違った。摘んでるんじゃなく、花を引っこ抜いていた。持っている籠を見ると、草花だけじゃなく、何かの実やら球根やらも入ってるみたいだな、うん。…何してんだアイツ。
気配を消してるあたり、忍なのはわかる。となると、ありゃ薬草か毒草の可能性が高いか…?

「…オイ」
「!?」

やはりオイラには気付いてなかったらしく、女は勢いよく前方へ跳ぼうとする。んなことさせねーけどな。ようやく希望らしきものを見つけたんだ、うん。

「待てよ。声掛けただけだろーが…うん」
「っ…!!何者だてめー…!!」

腕を掴んで動けなくすると、女はすぐにオイラを見上げて睨んできた。…ずいぶんと強気みてーだな、うん。殺気も出してきちゃいるが、これくらい、どうってことはねェ。それより。

「その籠の中身、一体何だ?答えろ、うん」
「は…?んなことてめーには関係ねーだろうが」
「毒草か?」

相手の意見は無視して問い掛ける。ふわり、と花の香りがオイラの鼻孔を擽った。

「…だったら、何だ」

先ほど気配を感じれなかったことでも思い出したのか、女は若干悔しそうに答えた。それなら話は早い。腕を離して、真っ正面から女を見つめる。

「その毒草、オイラに譲ってくれねーか?あとできれば、毒草の種類も少しばかり教えてほしいんだが」
「え?」

どうだ見たか!これが人に物を頼む時の態度ってもんだ、うん!
女の方はきょとんとしてた。…そういえば結構可愛いな。まあそんなこと関係ないが。…うん?

「…なんでそんなこt」
「お前指怪我してんのか?」
「!」

左の指に包帯が巻かれてるのを見つけて、思わず問う。どうやら図星みたいだな、うん。…そうだ。

「ちょっと待ってろ」
「…?」

さっき女が引っこ抜いていた濃い紫の花を一輪摘み、器用に輪っかを作る。そうして女の手をとり、包帯のしてある指にはめた。

「なっ」
「さっき良い香りがしたからな。お前にピッタリだと思うぞ、うん」
「っ!!?」

女の顔が、みるみる髪と同じ朱に染まっていく。女はアクセサリーとか好きだからな。オイラやるな!サソリの旦那なんか目じゃないぞ、うん!
オイラの紳士っぷりを称賛していたら、女がずいっ、と籠を突き出してきた。

「…やる」
「うん?」
「やる!!!!」

小さくて聞こえなかったから聞き返したら、急に怒鳴られた。女は無理やりオイラに籠を受け取らせると、そのまま走ってどっか行っちまった。なんだってんだ。…あ!!

「やべェ!毒草の種類聞いてねー!うん!!」

追いかけようとも思ったが、あんだけ全力で逃げられたんだ。毒草は貰っちまったし、恩を仇で返すのはクールじゃねェ。結局帰った。
その後サソリの旦那に、あの紫の花はニオイスミレと云う花だと教えてもらった。
2月15日の誕生花。花言葉は、高尚。奥ゆかしい。
そして、秘密の恋。




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