大人になった君達は





「多由也」

何の前触れも無しに開かれた扉。無遠慮に部屋に入って来た無愛想な顔と無感情な声。
黄緑色の瞳が女の姿を捉え、言葉を続ける。

「大蛇丸様がお呼びだ、来い」

女は特に驚いた様子もなく、右手に持っていた布を机に置いた。

「わかった」

横笛を腰のホルダーに戻しつつ腰をあげたその女は、長い赤髪を揺らし男の下へと歩み寄る。


扉を閉めて、薄暗い通路を会話も無い二人は歩く。蝋燭の灯火は揺らぐこともなく静かに辺りを照らす。

やがて見えた大きな扉を開ければ、幾つかの人影が二人を出迎えた。

「集まったわね…」

奥の玉座に座った男は二人を加えた五人…いや、六人をその蛇のような目で見つめた。


一番端の二人は右近と左近。双子である彼らは己の肉体を別の肉体に溶け込ませる能力を有しており、基本的に弟の左近の躯に兄、右近が寄生して弟の首の後ろから頭だけ出た異形となっている。
互い違いに片目を隠した髪型と、病んでいるような暗い瞳、不健康そうな紫の唇が特徴の忍である。

一つ隣の男は次郎坊。2メートルを越える巨体でオレンジ色の髪の毛が三方向のみ残して刈られた斬新な髪型の彼は、静かに主の次の言葉を待っている。貫禄のあるその姿はまるで吽の像のようだ。

六人のうち、一番の異形を誇る男は鬼童丸だ。浅黒い肌も目立つが、六本もある腕を見てしまえば霞んでしまう。黒く縮れた長髪を後頭部で一つに纏め、楽しみだとでも言うように口角を上げている。

つり上がった茶色の瞳を静かに閉じ顔を俯かせている少女…もとい女性は紅一点の多由也である。しゃがめば地面に着くほどの朱の髪が目を引く。固く口を閉ざす無表情は冷たい美しさで見る者を魅了するだろう。

真ん中を陣取るは、清潔さと無機質さを併せ持つ白い青年である。髪も肌も服も病院を彷彿とさせる白色で、その黄緑色の瞳。縁を彩る赤は血のようである。無感情な彼が唯一見せる感情の対象、大蛇丸に頭を垂れるその姿は、群を抜いて忠誠の言葉を感じさせられる。
彼の名前は君麻呂。大蛇丸の護衛を主とした音の五人衆の筆頭だ。


「アナタ達ももう子供じゃないのよね…」

大蛇丸は遠い昔でも思い出すように一瞬だけ目を細め、言葉を続けた。



「それじゃあ、任務の内容を話すわ…今回は…」








pipipipipipipi …


「……ん」

手を伸ばしてケータイのアラームを止める。温かい布団から出たくなくて二度寝を決め込む。今は2月だ。外はまだ寒いし、ついこの前も雪が降ってきたほどだ。
それに今日は日曜日だから早起きする理由も…。

…ああ、そうだ。

「今日って確か…」

アラームを止める際布団に引っ張り込んだケータイの画面を見れば、2月15日の文字が表示されている。


2月15日。今日は多由也の誕生日だ。


多由也とはNARUTOという漫画及びアニメに登場するキャラクターであり、私はそのキャラに大分入れ込んでいる。…と言っても入れ込めるほどのグッズがある訳じゃないけど。
ゲームにも途中から出なくなってしまったし、グッズと呼べるものと言えばずっと前に発売された食玩のフィギュアくらいなものだ。
それでも私のようなファンはいるようで、色々サイトを見て回ったりしてるんだけど。


先ほど見た夢を思い返す。今寝たら続きが見れないかと思うのだが、多分無理だろう。
でも夢の中の彼らは成長してて、原作では絶対に見ることが出来ない姿だったんだ。

実現しないのはわかってるけど、好きになっちゃったんだからしょうがない。

サスケ奪還編は平成15年で、今年はもう27年。初登場からなんて13年も経っている。
君麻呂はいっこ上だけど四人衆は皆同い年だ。
つまり今日は、四人衆皆が26歳になった日だ。

原作で死んでしまった彼らは、子供のまま時が止まってしまったけれど。


「大人になった君達は一体、どんな人になってたんだろう」


二度寝から起きたらケーキでも買いに行こうかな。

暖かいところへ意識が落ちていくのを感じた。また君達の夢を見れそうだ…。




…本当にありがとう。多由也を、君たちを知れて良かった。

happy birthday、多由也


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