小説 | ナノ

わり者との恋




「変な奴だな」
そう言って鳥人は静かに笑った。
かたんかたんと不規則な機械音が部屋中に響く。
街の人たちは落ち着かない或いは恐怖心を抱くと言う音は、彼にとってはむしろ子守唄のように聞こえる。
だって、この音を作り出したのは、目の前にいる鳥人。
原型的に恐らく、鷹に最も近い形の鳥系獣人。
ちょっと取っつき難くて何を考えているのか分かりにくいところもあるけど、その実人と触れ合うのを怖がっている不器用な可愛い人でもあるのだ。

「そんな変な奴を部屋に招いてくれるフェリックスも十分変だろ」
「・・・ああ、言われてみれば」
厭味っぽく言って見せた筈なのに、鳥人・・・フェリックスは素直に感心し、頷いた。
「そこはツッコミ入れるところだぜ?」
「レナード。そんな高度なコミュニケーション、俺が取った事があるとでも?」
「よし、じゃあ俺で練習しとけ」
互いに軽口を叩きながら、楽しそうに笑う。


獣人の住む、この街の変わり者フェリックス。
いつの間にかふらりとやってきて、一軒家を構えてから黙々と妙な機械や研究をしているという事で周囲の人々から疎まれがちだった。
フェリックス自身が人と交流するのを不得手としているのも相まって、益々孤立する一方。
そんな時に救世主というほどでもないが、現れたのがレナードだった。
この街唯一の人間で若いというのにプロの工芸家である彼は、自分とは全く違うものを造るフェリックスに興味を持ち、フェリックスの隔てていた壁をあっさりと打ち破り内側に入って来た。
たった一人の人間族とは言え、工芸の腕も人柄の良さも認められているレナードがフェリックスと仲良くなれば、街の人は最初こそ胡散臭そうにしていたものの、次第にフェリックスと打ち解けるようになる。

要するにレナードという存在がいたから、フェリックスはこの街に馴染めるようになったのだ。


「でも本当に大丈夫か?確か明日までに仕上げるって聞いた・・・」
「俺は夏休みの宿題は最初の一週間で仕上げる男だ」
「・・・手っ取り早く終わった、って言えば良いんじゃないのかそういうのって」
回りくどい奴だ、とフェリックスが嘴に手を当て苦笑する。
その様がすごく綺麗だとレナードは思った。

レナードは人間族、フェリックスは鳥人族。
種族が違うとか遺伝子的にどうのこうのとか、レナードにはそういった一般論は通用しなかった。
外見的に深い茶色の髪に穏やかそうな紫の瞳を持つ好青年で誰からも慕われそうなレナードは、その気になればランクの高い女の子も落とせる事が出来るだろう。
しかし、そんな彼が選んだのは鳥人で男。
半獣人ではなく、きちんと鳥人特有の嘴もあるし、身体を覆っているのは柔らかい羽毛だ。


くすりとレナードは笑い、フェリックスの顔に手を添える。
「そんなことより、まず言う事があるんじゃないか?」
「・・・・・お前は口を開くとソレだな」
頭が本当に年中天気だ、とフェリックスが顔を顰める。だが、心なしか嬉しそうにも取れる表情をしていた。

「やっぱりお前は変な奴だ。俺みたいなのを選ぶのだから」


End






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