「せんせー結愛ちゃんと大翔くんが喧嘩してるー」
「えっ、また!?」
教室で年少組の子達を寝かせようと絵本の読み聞かせをしていたお昼ご飯の後の時間、外で遊んでいた年長組のうちの一人が私を呼びにきた。
「絵美先生、こっちは僕がやりますので行ってください」
「あーすみませんお願いします」
一緒にいたもう一人の大輔先生に年少組の子達を任せ、靴に履き替えて急いで園庭に出る。
最近の恒例になりつつあるこの情景。
「ここにバケツ持ってきちゃ駄目なのにー!」
「サラ砂作る時は良いってこの前せんせーが言ってたもん」
「ルール破るなよ」
「せんせー良いって言ったもん!」
結愛ちゃんが遊んでいるところへ行ってはちょっかいをかける大翔くん。強気な性格の結愛ちゃんも負けじと言い返すから、いつも喧嘩が始まる。
好きな子ほどいじめたくなるっていう男の子の行動はいつの時代も変わらないのかもしれない。
内心微笑ましく思いながらも、私は先生として園児たちの指導はしっかり行わなくてはならないわけで。
「二人とも喧嘩しない!」
普段より少しきつめの声で注意をする。それから、優しく原因を聞いて喧嘩の仲裁に。
素直に謝り仲直りの握手をする二人の表情は、しかられた落ち込み半分と仲直りができた喜び半分といったところだろうか。
「じゃあ仲良く遊んできなさい」
はーい。と、可愛らしい声を揃えて片腕を上に伸ばす二人。すぐさま駆け出して砂場でおままごとをしている他の園児たちの元へと向かった。
「じゃあ行ってくるよ」
「あっ待って忘れ物」
「え?」
「いってきますのチュー」
そう言って結愛ちゃんは大翔くんのぽっぺにちゅっと唇を寄せる。
ふふっと小悪魔のような可愛く笑う結愛ちゃんと照れながらだけど嬉しそうに笑う大翔くん。頬をを真っ赤に染めた二人は、爆発してしまいそうなくらい。
この二人は大きくなったらどうなるんだろうなんて想像して、ふっと笑みをこぼす。この仕事をしていて良かったなあと思う瞬間の一つだったり。
「年少組の子たち皆寝ましたよ」
「大輔先生、ありがとうございます」
「絵美先生」
「はい?」
明日仕事の後空けといてくださいね。誰にも気づかれないよう私の耳元でこっそりと発せられた言葉は、私の頬をこれでもかと赤くした。
ときめき爆発
子どもだって大人だって、恋をする。
title:コランダム
130602
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