骸


街を歩いていたら、見知らぬ少年に声を掛けられた。変わった髪型に黒曜中学の制服。
どうやら道に迷ってしまったらしい。
なるほど、ここは並盛だから迷うのも無理はない。
私は出来るだけ正確に教えていると、彼はそこまで連れていってほしいと言った。
驚いたが、この後の予定は特になかったので快く引き受けた。
彼と色々な話をした。
学校で起こったこと、友達のこと…そして彼は最近引っ越したばかりということを知った。
彼はやらなければならないことがあるらしい。
そうなんだ、と返して彼の顔をちらりと見たら、忌々しげな、憎くて仕方がないというような表情で思わず背筋がひやりとした。
目的の場所に着いたので退散しようと踵を返すと、いきなり手首をつかまれた。
驚いて彼を見ると、悲しげで弱々しい笑みを浮かべていた。
彼は私に何か言ったようだったが、声が小さすぎて聞き取れず、その場で別れた。





あれから10年。中学時代、同じクラスで隣の席だった沢田綱吉は、高校卒業と同時にイタリアに発ったらしい。獄寺隼人と山本武を引き連れて。並盛大好きな恐怖の風紀委員長や、京子のお兄さんまでも。
そう言えば、中学時代彼らに一度だけ尋ねられたことがあった。
たしか、黒曜中学の生徒と関わったことがあるか、と。
私は何故聞かれたのかわからなかったが素直に肯定すると、彼らは複雑な表情でそうなんだ、と言った。
そこでふと、彼の名前を知らないことに気がついた。

あれから10年、別れ際に言った彼の言葉は一体なんだったのだろう。






(待っていて、必ず君を迎えに来ます)
(僕は君のことが、)



2010/07/19 12:00

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