03 お風呂でお約束

[ 4/83 ]

「お風呂は・・・まずは文次郎くんと仙蔵くん。次は長次くんと小平太くん。その次は留三郎くんと伊作くん。湯船に入る前に髪と体と顔を洗い、泡を流してから入りましょう。」
「・・・その格好はなんだ?」
「濡れでもいい服に着替えたの。子供だけでお風呂にいかせるわけにはいかないからね。」
「一緒に入るのか!?」

Tシャツと短パンにかえてる最中わたわたしてたけど、この六人思春期みたいな反応するよね
ちょっと気持ち悪い。

「ほら服脱いで。行くよ。」

早くしないと日付かわる
子供は成長ホルモンの出る時間帯に寝かさないとね


嫌がる2人(特に文次郎くん)を風呂場になげいれ、シャワーをかければ
2人の全身を拒否権を与えずに洗う

流石に下半身には強烈な拒絶をいただいたから、2人に任せたけども

「次の2人呼んできて?で、着替えといて。」

バスタオルで拭き、タオルを一枚ずつ渡して向かわせれば、小平太くんが元気よく突入してくる
あとから長次くんもきて、2人も前の2人と同じようにすれば、小平太くんの背中に釘付けになった

いや、他の三人も気にはなったんだけど

「これ、煙草押しつけられた火傷だよね?これは・・・コードくらいの細さの縛り痕。ねぇ、暴力ふるわれてたの?」

途端にガタガタと震え出した小平太くんは、タイルにしゃがみこんでしまう
隣にしゃがみ、落ち着かせるように背中をさする

「明日警察にいったら、児童相談所にも連絡いれてあげるから。そこでしっかり話しっ、」

ドン!と押された、と思ったら、タイル張りの壁に後頭部を強打した
チカッと星が飛ぶのをみるほど衝撃的で
揺れた視界が鮮明になれば、上にのって胸ぐらを掴む小平太くんの大きな目からは涙が溢れ出す

「小平太くん?」
「わ、わたしは、戻りたくない!ずっとここにおいてくれ!!」

一足先に浴槽に浸かる長次くんも、淵に手を添え頷く
けど、こればっかりは・・・私犯罪者になりたくないし

「私は一晩泊めるだけ。」
「嫌だっ!こ、こっちへきてから、初めてなんだ!」
「こっちって何?何の話?」
「あんな温かくておいしいものを食べたのも、こうやってお風呂入れるのも、優しくされるのが、初めてなんだっ、」

見捨てないでくれ。そう言って私の鎖骨付近に顔をつけて泣く小平太くんと
悲しそうに顔を歪める長次くん

「・・・小平太くん、」

扉の磨り硝子の向こうに見える影は他の4人だろうか?

「小平太くん?聞こえてるかな?」
「・・・ぐすっ、」

鼻をすする音で返事された

なんかこう・・・離しちゃいけないんだろうな・・・
助けてというこの手を振り払ったら後悔しそう

これが噂の母性愛?

「なんだかなぁ・・・」
「ひっく、う、」
「小平太くん、私の言うこと守れる?」

挨拶はする。とか、好き嫌いしない。とか、守れる?

そう言えば、泣きながら勢いよく頷かれた

「乗りかかった船・・・だからね。一晩といわず、気の済むまでいていいよ。」
「本当か!?」


ありがとう!と抱きしめられ(抱きつかれ)、私は泡だらけの服も気にせず笑い返した


prev next
back