02 遅すぎる夕食

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わらわらと目の前に座る6人の子供は誰も整った顔をしているけど、生憎子供は苦手だ
しかし、5人を出している間に携帯は文次郎くんにとられてしまったため通報できない

「えーっと。」

とりあえず、入ってた紙と子供を見合わせ、名前を確認していく

「立花仙蔵くん、中在家・・・長次くん、七松小平太くん・・・?・・・なんだ?しょくまん。違うだろ。変換はできそうたけど。青の子、苗字なんて読むの?」
「・・・けまだ。」
「へー・・・食満留三郎くん、善法寺伊作くん・・・か。よし、文次郎くん携帯返して。」
「ケイサツに連絡しないなら返す。」
「いやいやいや、しないと私誘拐犯みたいじゃん!」

逮捕はいや!と言っても、警察はダメの一点張り
その年でもう何か悪さをしたのかい?

「あのねぇ」
「貴方が私達を買ったのでは?」
「買ってない!私は子供が苦手なの!」
「僕たちをこの家においてください!」
「だ、か、ら!苦手なの!」
「洗濯も掃除も炊事もなんでもするぞ!
「任せられるかぁ!!」
「・・・断られれば、前の家に戻るしかない。」

一気に葬式ムードになったリビングで、頭を抱えた

警察に連絡して追い出したい。今すぐに。

そう思うのに、ガタガタ震えて泣き出されてしまっては、これ以上強くはいえない

「・・・あーもう!!なんで私が!文次郎!!携帯を返しなさいっ!」
「っ!」

びくりと震えて携帯を差し出してきた文次郎くんから携帯を受け取り、上司に電話をかける
上司が仕事中毒の独り身で、日付まわっても嬉々として仕事をするタイプでよかっと
3コール内で出てくれた上司に明日有給使って休みをもらうべく、今取り組んでいる仕事の進捗状況もざっと説明すれば
1日だけだぞ。と許しを得た

携帯をソファに放り投げ子供に振り向けば、すっかり萎縮してしまった小平太くんと伊作くんを守るように4人が固まっていた

「・・・ほしいものある?」

食べ物とか、飲み物とか、トイレにお風呂、なにかある?

一旦子供から目をそらし、それぞれの鞄から出したサイズがバラバラな服を全部戻し
一番小さなサイズのパジャマと下着一式を改めて取り出す
そして、ひたすら沈黙してじぃっと伺ってくる子供たちをみる

「一晩なら泊まっていいって言ってるの。」
「子供が苦手なんじゃないのか。」
「苦手だよ。だからって・・・そんな怯えた様子の子供をほっぽりだせるほど嫌いではない。嫌なら親切にはしな」
「は、腹が、減った!」
「わかった。30分ちょっと待って。」

小平太くんの元気な要望に頷けば、僕も私もと次々に手をあげはじめて
少し、可愛いと思ってしまった

早炊きでご飯を炊き始め、冷蔵庫で解凍していた挽き肉では足りないのは明らかなので、冷凍庫にある挽き肉をレンジに放り込んで解凍
玉ねぎと人参をみじん切りにして炒める
冷ましてるうちにパン粉、牛乳・・・と頭の中で段取りたてて黙々と作業していれば
くっと服を引っ張られた

「なに?」
「て、手伝いますか?」
「台とかないから届かないでしょ?暇ならビニールから服出しておいて。」

誰だっけ?伊作くんだっけ?
手が震えてたけど、怖いなら近づかなきゃいいのに
・・・まだ掴んでるし。
解凍終わったから邪魔・・・

「誰か伊作くん連れてってくれないかな?邪魔なの。」
「ご、ごめんなさい!」
「伊作をいじめんな!」

私が悪者か?そうなのか?
留三郎くんがはなしてくれたけど、思い切り睨まれた


形を整えた6つのタネを熱したフライパンにおいていけば、ジュワッといい音がする
換気扇をつけてもわかる肉の焼けるにおいに、小平太くんが近づいてきた

なんだこの子たち・・・妨害したいわけ?

「邪魔だよ。」
「それなんだ?」
「ハンバーグ。」
「・・・?」

今時の子供がハンバーグ知らないなんてと驚いてしまったが、まぁいなくはないだろうと突っ込まない

「いつもどんなの食べてるの?」
「よくわからん。」

あぁそう。

両手鍋にタッパーからソースをうつし、作り足す
鍋を火にかけハンバーグをひっくり返し蓋をする

コンロ、次買うなら三口がいい。

動けばなぜかついてくる小平太くんを無視してお風呂をつけ、客用布団を出す
ここでハンバーグを鍋に移し煮る

「ほうれん草、ブロッコリー・・・油揚げ。トマト・・・はないな。」

ケトルで沸かしたお湯でブロッコリーを茹で、ザルにあげて
今度は味噌汁。冷凍してあったほうれん草と油揚げを鍋にいれる

「忙しないな!」
「・・・、」

誰のせいだ誰の!

布団乾燥機をセットして、ここで炊飯完了
そして気付く。食器がない。

「箸は割り箸がある。茶碗はない。あるわけなくない?六人だもん。」
「あるぞ。」
「どこ・・・に、わぁ、そんなのまで・・・」

文次郎くんがもってきた食器は白い茶碗に平皿に木のお椀に箸、マグカップ
6セットしっかりある。助かった

「使わせてもらうね。」
「おう。」

文次郎くん可愛いな・・・隈さえなきゃ。多分。

食器類は一度洗い、布巾でふく
炊き上がった白米を盛り、出したテーブルに運んだ

トレー、あってよかった。

味噌汁、麦茶、そしてハンバーグにブロッコリーを添えれば
急だったけど合格でしょ。

「食べていいのか?」
「びっくりすること聞くね。お腹空いてるんじゃないの?食べなよ。いただきますは忘れずにね。」

すると、いただきますとほぼ同時にがっつきはじめたのをみて、おおぅ。と変な声を出してしまった

「ご飯ならおかわりあるからね。」
「おかわり!」
「・・・う、うん。」

早いな小平太くん。瞬殺じゃないか。

ほかほかとご飯をよそってあげれば、キラキラとした笑顔を向けてくれた

なんだこれ、キュンとする

「もそ、」
「・・・?」

なんか喋りかけられた・・・気がして振り向けば
長次くんが背後に立っててビックリした。気配がないよ長次くん

「・・・食べないのか?」
「私?まぁ・・・気にしないで。それより、おかわり?」
「・・・ないのか。」

茶碗を受け取り盛れば、気にしないで。と強めに言ってテーブルに戻す

材料が足りなくて私は食べれない。なんて言える?無理でしょ。
だって相手3歳の子供だもの(プロフィール用紙が正しければ)

「・・・イチゴは、昨日ジャムにしちゃったか。小粒だし。デザートはなしだね。」
「なあ!」
「はいはい。」
「うまかった!ありがとう。」
「もう食べたの?早いね。」

空になった食器をワザワザ持ってきてくれた小平太くんの頭を撫でれば
一瞬身構えたのち、顔を緩めた


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