30 指示書

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「今日も遅いのか?」
「普通。」

毎日寂しそうに見送ってくれる小平太くんたち
そう・・・たち。

「十時頃か。」
「女なんだ、夜道には気をつけろ。」
「・・・迎えに、行く。」
「いや、いらないから。」

6人揃ってのお見送り
これは前のままが楽だった

家に帰ったら迎えてくれる人がいるとか、お見送りしてくれる人がいるとか
正直な話、迷惑。ま、この子らに気は使わない方だからまだマシだけれど

「行ってきます。」
「行ってらっしゃい。」
「気をつけろよ。」



「というわけで、別に早く帰りたいとかありません。」
「そうか。」

安心した。と言う上司に苦笑い
出張指示書を受け取った

「本ちゃんは来月ですか。」
「新人が来る前に行ってほしい。」
「・・・まさかとは思いますが、私が教育係ですか?」
「そのまさかだ。」

新人は、4月〜6月末までを会社での研修期間として過ごし、仕事に混ざるのは7月から
そこから、年度末まで教育係が1人つく

「私、」
「院卒で、男。優秀らしいし、問題ないだろ。」
「・・・プライド高そ。」
「よくわかったな!卓上の上でのみイキイキするがり勉チキンだ。」

後ろから先輩に肩を叩かれ、うへ。と思いながら、断るわけにはいかず頭を下げた

「先輩、知り合いですか?」

イスに座り、飴を1つ舐める

「後輩だ。もっとも、後輩の後輩で、後輩が大変っすよと教えてくれただけだ。」
「後輩が多すぎてわかりづらいですよ。ま、使えなかったら他にまわすでしょ。」
「いや、鍛えてやれよ。」
「家でも会社でも、誰かの世話してばっかり・・・というか、出張指示書が出張前日ってどうですか?」
「通常運転。」
「ですよね。あー・・・夕飯どうしよう。」
「日帰りだろ?駅弁。」

ほら。とパソコン画面を向けられ、映し出された駅弁たちに微妙な顔
駅弁を家でですか?とスクロールしていけば、今はデパ地下でも売ってるからなと
それは最早駅弁でなくデパ地下弁では。と呟いた

「なんか、旨くなさそうな名前。」
「駅弁も、言葉だけならイマイチ。」

じゃあ駅弁にするかな。と幾つかメモすれば
帰りだと無くなるから行きに買えといわれた
腐らないといいな。が、感想だ

「ナマモノは外しておけよ。」
「当たり前です。」


明日はいつもより早起きだと、今日は早く帰りたい。と唸った

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