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「いつまで寝てる気?」
戸を開ければ、部屋の隅にいる塊がビクッと動いた
構わずカーテンを開けて、朝日を迎え入れる
「朝食、冷めちゃうんだけど。」
腕を組んで塊の前にたてば、その布団でできた塊がもぞもぞと動き
ぴょこんと仙蔵くんが顔を出した
・・・真剣な顔してるから言わないけど、顔のサイズと首から下の布団の塊サイズがアンバランスというか
不気味なオブジェみたいで気持ち悪い
「おはよう、仙蔵くん。」
「・・・」
無言で返すなそして睨むな
・・・これは、私が折れるべきなんだろうけど
「昨日は取り乱してみっともないとこ見せたね。ごめん。」
「・・・一日、考えたのか。」
「考えたよ。」
しゃがんで仙蔵くんの髪を梳けば、仙蔵くんは少し身を強ばらせた
「改めて。気が済むまで、この家にいな。」
徐々に見開かれていく仙蔵くんの目が僅かに潤み
いいのか?と少し塊に引っ込みながら呟いた仙蔵くんに、今すぐ朝食を食べるならね。と笑ってみせた
「っ、私たちは、生まれた時代がそもそも違うのだ・・・ここはヘイセイと言うらしいが、私たちは室町時代で生まれ、十の時から忍びの鍛練を積んできた。」
・・・うん、何言ってるのか後で整理しよう
とりあえず今は、話をただ聞いて、頷けばいい
「予測不能な事態にも臨機応変に対応する術を学んできた私たちですら、置かれた状況を理解し慣れるまでに時間が掛かった。」
一日やそこらで受け入れられるわけはない!と、切れ長の目から涙が零れた
本当、綺麗な顔をしてるよね
「受け入れたから家にいなって言ってるんじゃない。小平太くんとの約束を反故にするのが嫌なだけ。」
納得いった?と首を傾げれば、仙蔵くんがすぽんと布団の塊に入っていってしまった
そっと布団に手を伸ばし、布団を剥がした
「・・・ちょ、小平太くん顔が汚い。」
「***っ!!」
素直な感想は通り抜けたようで何よりです
鼻水と涙でぐちゃぐちゃな顔のまま抱きつかれ、勢いよく後ろに倒された
床に頭がぶつかって大分痛いけど、お風呂場で頭うったときよりはマシ
「小平太くん、重」
「わたしっ、まだいていいのか!?***は、わたしたちにヒドいことしないか!!?」
馬乗りになっている小平太くんの涙と鼻水が着替えたばかりな服に染み込んでく
「しないよ。優しくするかはわからないけど、ヒドいことなんてしない。」
「っ、う、わ、ぁあああんっ!!」
うわーっと泣き出した小平太くんを、長次くんがおろしてくれて
上体を起こしてあーあと服をみれば、伊作くんに飛びつかれた
今度は倒れなかったけどね
「・・・伊作くん、」
「***さん!僕、僕***さんが大好きです!!」
「ありがとう。」
さぁ皆ご飯をお食べと伊作くんを下ろし、立ち上がる
「冷めちゃっただろうけど、文句はなし。」
リビングを指差しそう言えば、仙蔵くんと文次郎くんが座って頭を下げた
「これから、よろしくお願いいたします。」
「・・・はい。よろしくね。」
なんだか、やっと始まった気がする