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「今回納期間に合わないかと思ったよ。」
「***に限ってそれはない。」
「・・・働くお母さんって大変だね。」
「そんな***にはい。」
差し出されたA4用紙に書かれた病児保育と夜間休日診療、サポートセンター情報に
ありがとう。と笑い読み込む
「あとはお金くらいか・・・」
「本当ありがとう。助かる。」
「助けになりたいからな。」
食器を返却しながら、小さくため息
「・・・早く帰った方がいいと思う?」
と呟けば、優先順位としては?と返されてしまう
仕事。と即答すると、笑われた
「なら仕事していきな。早く帰ったって仕事気にしてれば子ども達に察されるぞ。」
「それもそうね。さ、あと6h、詰めますか!」
「8だな。」
「下手したら9。まぁ、仕事があるのはいいことだし、色々学べるし!あ、休憩中に移動だから行くね。」
「こっちは面談後出張。またな。」
タッタッタと走りながら、食後の運動がてら階段をあがる
仕事は楽しい。力が身について、頼られるのが嬉しい
子供らには申し訳ないが、優先できるほどではまだないんだ
「これが親なら最低だね。」
いや、そうでもないな。とすぐに否定した
「***さんの母上は、どんな人ですか?」
伊作くんの質問に、仕事人間だった。と返す
次にきた父上はどんな人ですか?にも、仕事人間だった。と返した
お粥を食べていた伊作くんは、小さい頃からですか?と首を傾げる
「小学校にあがると早退のお迎えも来なかったし病院も一人で行った。弟妹の世話して宿題やって家事して寝るの繰り返し。それを当たり前とした、両親だったよ。」
「寂しかった、ですか?」
「要領よくなかったからね、考える暇もないくらい忙しくて感じなかった。今思い返しても、両親がお金を運び私が家を守る。で役割分担してただけだから・・・うん、問題なかった。」
「・・・・・・***さんが仕事中心で生活してる理由がわかった気がします。」
生き甲斐だからね。と空になった器を持ち、薬を飲むように言ってキッチンへ戻り
他の子供らの食器も一緒に洗っていると、くん。と服の裾を引っ張られた
「・・・小平太くん、どうしたの?」
伊作くんの癖をやられたからビックリした
小平太くんから飛び出した台詞にも、ビックリした
「わたしたち、忍びのたまごなんだ。」
「・・・、そっか、よかったね。」
いくら子供らしくないと言ってもごっこ遊びをするのかと
けれど、小平太くんは止まらない
「室町時代からきたんだ。」
小平太!と文次郎くんが止めにくるけど、長次くんが防ぐ
「信じてくれるか?」
「タイムトリップを経験したことないから信じられないかな。」
「・・・たいむ、」
「過去に戻ったり未来に行ったり。時間旅行のこと。」
「わたしたちはしてきたぞ!」
ごっこ遊びにつき合うなら是非休日でお願いします
平日は厳しいです。ということで、あしらいます
「そっか、貴重な体験できてよかったね。さ、向こうに行きな。」
また洗い物に戻った私を、小平太くんは暫く見つめていた