義父様は僕に忍者になってほしいわけではないと仰っていたし、僕は薬師が向いているのだからやはり忍たまになる必要は感じられない
けれど、先生方に相談しても顔を知る生徒に相談しても頑張れしか言ってもらえない

結局、僕は逃げるように仕事に没頭し、試験は変装をして気配を殺しひっそりと忍務のように遂行した

それが、一年の後期。新野先生が保健委員会に参加しないかと提案し、委員長が仲良かっただけに断れずいつもの怖がられる服装で参加することとなったんだ

「お邪魔します。」
「お、きたきた!なんだ、保健委員しかいねぇんだから顔みせろよなぁ!」
「新入生がいるときいたので・・・え、」
「・・・・・・あ、れ、」

現れた肌を見せない僕に怯える新入生が1人、もう1人の新入生は僕をみて首を傾げている。その顔に、僕の足は無意識に一歩後退した

「っ、新野先生、すいません。用を思い出したので。」
「どうしたんですか?」
「あ、おい!」

即座に踵を返し、医務室を出る。ひたすらに廊下を走った

「な、んで!」

もう1人の新入生。成長したというのに、やはり同じ声に同じ顔の・・・大切な、弟

(会ってしまった・・・!まさか、あの家が跡取りを外に出すなんて想像すらしてなかった!)

顔は見られてない。気づくはずはない。声は同じでも、布越しだから大丈夫。学園長の庵まで走った僕は、中にいた義父様に飛びつき泣いた

嬉しかった、二度と会えないと思っていたから
怖かった、なぜ消えたのかと問われれば、理由を言わなければならないから
恐ろしかった、もしかしたら覚えてないかもしれないし、僕を嫌いになってるかもしれない

「弟がっ、僕の、僕の大切な弟が!な、んでっ、なんで、ここにっ!」

情けなくわんわん泣く僕の頭を、義父様はただひたすら撫でてくれた。多分義父様は知っていたんだ。知っていて、僕が弟を大切に思っているのも知っていて、会わせたんだ


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