「・・・な、ん・・・い、さく?」
「小平太には特別だよ?小平太が一等この人を好いてたみたいだから、顔がいつでも見れるように。ね。」

ガタガタと震える小平太の顎をつかみ、大きく開かれる目の前に生首を晒す。生首なんて見慣れてるはずの小平太が、ごめんなさいごめんなさいと謝りながら僕に視点を動かした

「僕の伊賀を殺すほど好いているんでしょ?一等なんだよね?」
「ちが、あれはっ、わたしじゃな」
「なら仙蔵?文次郎?長次?留三郎?鉢屋?不破?尾浜?久々知?竹谷?滝夜叉丸?たむ」
「ちがう!ちがうんだわたしなんだっ、でもっ!でもわたしじゃな」
「小平太なんでしょ?」

小平太は仕様がない子だねと頭を撫でてあげれば、小平太は生まれたての小鹿のように震えさせていた足を折り床へ崩れる。どうしたの大丈夫?としゃがんで膝を撫でて、ほら早く受け取ってと嫌だと叫ぶ腕(かいな)に抱かせこれで一緒だねと安心して立ち上がった

「これでみぃんなに配り終えたから、もう気にしないでいいよね。」

僕ね、誰も許す気はないんだ。僕の世界を壊した誰をも、許せるはずがないんだ

ガリガリと手の甲を引っ掻く小平太にまたねと挨拶をして、僕は遅刻しちゃうと実習集合地点へ向かう。比較的簡単な実習だけど、油断すれば明日なんてわからない

「簡単に死なないでね、みんな。」

薬を仕込んだ扇は伊賀が作ってくれた専用の。懐へしまったそれは、雨期の露草のようにずっと瑞々しい色をしていた

僕は不運大魔王なんて称号を得てる不運委員会の委員長。敵にも味方にも怪我人が出れば手を貸さずにはいられない、忍びに向かない人。そんな評価は僕の仮面に上手く塗られた油断

「遅くなりました。」
「よし揃ったな。ではこれより、戦場での情報収集の実習に移る!」

死なないでね。苦しんでね?僕と一緒に地獄へ堕ちてね。どうか君たちが伊賀と同じとこへ行きませんように

「命を落とすこともある危険な実習だ。皆心してかかるように。」

先生の言葉に、僕はいつもとおりに笑みを浮かべた




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