信じているわけじゃないの。私が人に好かれる可能性なんて、だから、私はなるべく人の迷惑にならないように息を潜めて生きる

「っ、げほ、ごほ、」
「なぁ、あんたうざいんだ。あんたのせいで弥栄の元気がない。」
「んぐっ、あ゛・・・!」
「だからさ、弥栄が悲しまないように自分の意志で、自分の足で、出て行ってくれ。」

だからね、自分に向けられる全てに、傷ついたりしないの
だってね、もう、傷つきすぎて、心なんて形を保ってない
粉々に砕かれて、もう笑顔と苦しい顔しかできないの。流石に、酷いことされている時に笑顔のままではいられないから、苦しい顔すらできなくなったら私人間じゃなくなる気がする

私に酷いことをしていた人がどこか行って、私は井戸に向かってずるずると頑張って歩いた
汲み上げた水に浮かぶ顔はやっぱり笑顔で、もしかしたら、苦しい顔ももうできないのかもしれない
できないなら、苦しいなんて感情もどっかいけばいいのに

いっそ本当に人間じゃなくなれば、こんなとこから逃げ出すのに

「・・・洗濯、しないと。」

色んなとこが痛い。ずっと、もう死にたいって思ってる。でも負けたくない、私だって存在することくらい許してもらいたい。誰でもいいから、私を認めてほしい

ジリジリと降り注ぐ太陽に汗を流しながら洗濯をしていれば、ジャリ。と小石たちか踏まれる音がした
無意識に洗濯板を往復する手に力が篭もって、次はなにされるのかとぐっと震えを堪えて立ち上がると、振り向く

「・・・はじめまして、ですよね。」
「・・・、」

敵意はありません。私はあなたを害しません。そう精一杯表して初めて会うその人に笑えば、その人はぐっと息を詰めて目を見開いた
手には、何度突きつけられたかわからないクナイという刃物が鈍く光って、私の足を逃げられないように見えない何かで地面に縫いつけてしまった